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36年越しの見事な続編『ビートルジュース ビートルジュース』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.69】

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新しいキャラクターによって浮かび上がるディーツ家の系譜





 前作にてディーツ家のひとり娘リディアは、持ち前の霊能力によってメイトランド夫妻と接触を果たし、また現世に打って出ようとするビートルジュースに花嫁として狙われてしまう(生者と結婚することによって現世に出てこられるようになるらしい。死からの復活なのかどうかは不明)。若きウィノナ・ライダーが演じたこのリディアは、青白く鋭利な顔つき、にこりともしない冷めた表情、黒髪に黒ずくめの衣装という風貌により、それから数年後に『アダムス・ファミリー』(91)でクリスティーナ・リッチが演じたウェンズデー・アダムスと並ぶゴス・アイコンとなったが、そんなリディアの娘として新たに登場したアストリッドを演じるのが、バートンが指揮をとったNetflixドラマ『ウェンズデー』(22~)で素晴らしい新生ウェンズデー・アダムスを見せてくれたジェナ・オルテガである。今リディアの娘を演じるべきは確かに彼女をおいて他にいない。


 マイケル・キートンのビートルジュース役は当然として、リディア役のウィノナと、その継母デリア役のキャサリン・オハラが続投すること、リディアの娘役がオルテガであることはかねてから話題だったが、そのアストリッドが加わることによってディーツ家3世代の女性たちの系譜が浮かび上がってくる。前作では単にリディアが継母とそりが合わず反発する(そこまで積極的な態度でさえないのだが)という個別の関係が描かれるだけだったが、アストリッドがやはり同じように母に反抗的であることでその関係はリフレインされ、母となったリディアはかつてデリアが(少なからずも)感じたであろうことを追体験し、その様子を見てデリアはほくそ笑む。これがディーツ家の母娘の関係なのか、連鎖を断ち切り関係を修復することはできるのかが、本作の大きな軸のひとつだと思うが、前作にあった要素を下地に、見事に次世代の物語を広げた格好となる。


 本作の脚本は『ウェンズデー』のショーランナーであるアルフレッド・ガフとマイルズ・ミラーが手掛けているが、あちらでも母娘の確執は大きな軸だった。ウェンズデーと母モーティシアはもちろん、モーティシアとその母ヘスターの関係もかなり険悪であることが描かれる。黒ずくめの母に挑む娘役をすでにマスターしていたオルテガが、アストリッド役に適任だったことも納得である。また結果的に彼女はクリスティーナ・リッチとウィノナ・ライダーという、往年の2大ゴス・アイドルと続けて対決することになり、見事やってのけた。


 ちなみに、元々前作ではデリア役にアンジェリカ・ヒューストンが検討されていたというのだからおもしろい。『アダムス・ファミリー』のモーティシアが新ウェンズデーたるオルテガの祖母としてフレームにおさまる世界もかすかにあり得たのかもしれない。もちろんそれではほとんどアダムス・ファミリーになってしまうし、現行のデリアのエキセントリックなキャラクターはキャサリン・オハラあってこそだ。


 デリアの夫にしてリディアの実の父チャールズは登場する前にすでに死亡しており、その突然の死によってデリア、リディア、アストリッドが一同に会することになり、物語が動き出す。彼がどのように命を落としたのかという回想シーンは唐突なストップモーション・アニメで挿入され(乗っていた飛行機が海上に墜落し、無事でいたもののサメに食べられる。ティム・バートン自身の格安航空における悪夢的な経験が着想元になっているらしい……)、死後の世界で登場した際にも上半身がかじり取られた状態で顔は見られなくなっている。2000年代初頭にスキャンダルを犯し、公の場からほとんど姿を消してしまったオリジナル・キャストのジェフリー・ジョーンズ不在のまま、なんとかチャールズを登場させた形だが、先に触れたようにメイン・キャストのほとんどが綺麗に出揃っている中では、唯一ひと工夫必要なところだったことだろう。その工夫にストップモーションによる回想や、顔の欠けた歩く死体を出すというのが非常に本作らしい。それに最初から一家で唯一の男性が不在であることで、前述のような女系的な関係が際立ってくるというものだろう。




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