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『ブラジルから来た少年』黒髪・碧眼の”少年たち”の恐るべき正体

(c)Photofest / Getty Images

『ブラジルから来た少年』黒髪・碧眼の”少年たち”の恐るべき正体

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『ブラジルから来た少年』あらすじ

南米パラグアイ。ナチ・ハンターの青年コーラーは旧ナチス党員の会合に潜入しアウシュヴィッツ収容所の主任医師だったヨーゼフ・メンゲレを目撃する。コーラーは早速ウィーンにいる古参のナチ・ハンター、リーベルマンに情報を伝えるが、リーベルマンは取り合おうとしない。直後、会合の様子をテープに録音したコーラーは党員たちによって無残にも殺害される。そのテープにはメンゲレが計画していた恐るべき”第4帝国”復興の手順が録音されていたからだ。それは、世界のあちこちで暮らす65歳前後の公務員たちを殺害するという、狂気に満ちた陰謀だった…。



 今も地球上のどこかで生きているナチスドイツの残党を巡るサスペンス・スリラー。この少し使い古されたジャンル映画には、意外と知られていない傑作が潜んでいる。『ブラジルから来た少年』(78)、原題”The Boys From Brazil”はそんな1本だ。少年=BoyではなくBoysと複数形になっているところがミソなのだが、それはおいおい説明することにしよう。


 本サイトでも紹介した『ローズマリーの赤ちゃん』(68)で知られるアメリカの人気作家、アイラ・レヴィンの原作を、『猿の惑星』(68)や『パットン大戦車軍団』(70)など、1960年代から70年代にかけて話題作を手がけたフランクリン・J・シャフナーが監督した映画は、冒頭から緊迫感溢れる場面で始まる。


『ブラジルから来た少年』予告


Index


恐るべき”第4帝国”再建計画



 南米パラグアイの首都アスンシオン、ナチ・ハンターの青年コーラー(スティーヴ・グッテンバーグ)は旧ナチス党員の会合に潜入しアウシュヴィッツ収容所の主任医師だったヨーゼフ・メンゲレ(グレゴリー・ペック)を目撃する。コーラーは早速ウィーンにいる古参のナチ・ハンター、リーベルマン(ローレンス・オリヴィエ)に情報を伝えるが、リーベルマンは取り合おうとしない。直後、会合の様子をテープに録音したコーラーは党員たちによって無残にも殺害される。そのテープにはメンゲレが計画していた恐るべき”第4帝国”復興の手順が録音されていたからだ。そこには、世界のあちこちで暮らす65歳前後の公務員たちを殺害するという、一見謎めいた、しかし実に用意周到で狂気に満ちた陰謀の中身があった。


 受話器の向こうで息を殺して相手を威圧するメンゲレの存在を感じ取ったリーバーマンが、コーラーが最後の電話に残した手がかりをもとに、計画の目的を調査するための旅に出る。ここからが震えるポイントだ。メンゲレが標的にした男たちが、全員65歳前後の公務員でなければならなかった理由。彼らは養子縁組で迎えた息子に一応に冷たく、虐待的な態度をとっていたという必然性。さらに全員42歳前後の妻を持ち、彼女たち全員が息子を溺愛していたという家庭環境。そして、リーバーマンの前に現れた息子たちの”驚くべき外見”が、計画の真の目的に繋がる時の衝撃。それらは今見ても鮮烈だ。


 Boysたちは全員が黒髪で碧眼、そして不遜な態度で相手に接するという奇妙な共通点があり、リーバーマンの絶望感と戦闘意欲を同時に掻き立てるのだ。





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