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『ぼくのエリ 200歳の少女』愛と血は同じ色―静謐と残酷がせめぐ幻想恋愛譚  ※ネタバレ注意

(c)Photofest / Getty Images

『ぼくのエリ 200歳の少女』愛と血は同じ色―静謐と残酷がせめぐ幻想恋愛譚 ※ネタバレ注意

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※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『ぼくのエリ 200歳の少女』あらすじ

ストックホルム郊外。いじめられっこで繊細な12歳の少年オスカーは、母親と二人でアパートに暮らしている。ある晩、オスカーは隣の部屋に引っ越して来たエリという少女と出会う。エリが現れた頃と時を同じくして、近くの街では青年が逆さづりにされてノドを切り裂かれ、血を抜き取られるという残忍な殺人事件が次々と起きる。


Index


鮮烈で美しい「北欧映画」の金字塔



真白い雪と、滴る鮮血。

狂おしいほど残酷で、美しい初恋。


 スウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)は、日本でも人気のジャンル「北欧映画」の金字塔として常に名が挙がる人気作だ。清らかな少年少女の恋模様と、目を覆いたくなるようなダークな描写のコントラストが多くの映画ファンの心を射止め、繊細かつ芸術的な映像と情感豊かな音楽、衝撃的なストーリーも相まって、本国公開から約11年を経ても色褪せることなく、人々を魅了し続けている。


 本作で卓越した手腕を絶賛されたトーマス・アルフレッドソン監督は、後に『裏切りのサーカス』(11)も手掛けた逸材。見事な映像世界を作り上げた撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマは、本作を経たのち『ザ・ファイター』(10)、『裏切りのサーカス』、『her/世界でひとつの彼女』(13)、『インターステラー』(14)、『007 スペクター』(15)、『ダンケルク』(17)と大ブレイクを果たした。


 『パンズ・ラビリンス』(06)で注目を浴びた当時のギレルモ・デル・トロ監督は、『ぼくのエリ 200歳の少女』を「繊細、恐怖、詩的――必見の映画。戦慄の童話」と絶賛。2008年のスウェーデン・アカデミー賞では最優秀監督賞・最優秀撮影賞・最優秀脚本賞・最優秀美術賞・最優秀音楽賞の5冠に輝き、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞の外国語映画部門にもノミネートされるなど73 受賞・53ノミネートという堂々たる結果を残した。


『ぼくのエリ 200歳の少女』予告


 日本では、本国公開から2年後の2010年7月に公開。当時は、『トイ・ストーリー3』、『借りぐらしのアリエッティ』、『ゾンビランド』、『インセプション』といった強豪たちに挟まれたが、それでも人々の記憶に残っている事実は、本作のクオリティの高さの証明といえよう。


 同じく2010年には、本作のハリウッド版『モールス』も製作され称賛を浴びた。『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)で鮮烈な印象を残した俊英マット・リーヴスが監督し、後に『X-MEN』シリーズでナイトクローラーを演じるコディ・スミット=マクフィーと『キック・アス』(10)でブレイク直後のクロエ・グレース・モレッツが共演している。


 ちなみに、『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作でデビューし、映画では共同脚本を担当したヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストが久々に原作・共同脚本を務めた映画『ボーダー 二つの世界』(18)が、第71回カンヌ国際映画祭のある視点部門でグランプリを受賞。本作にも通じる幻想・残酷・抒情が揃った世界観を、色濃く映し出している。



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