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『ダンケルク』クリストファー・ノーランが世界最高解像度のIMAXカメラで収めた、戦争という名の膨大な浪費
『ダンケルク』あらすじ
フランス北端ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士。背後は海。陸・空からは敵――そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミー(フィオン・ホワイトヘッド)とその仲間(ハリー・スタイルズ)ら、若き兵士たち。一方、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間を助けようと、民間船までもが動員された救出作戦が動き出そうとしていた。民間の船長(マーク・ライランス)は息子らと共に危険を顧みずダンケルクへと向かう。英空軍のパイロット(トム・ハーディー)も、数において形勢不利ながら、出撃。こうして、命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。勇気ある人々の作戦の行方は!?
Index
ノーランがフィルムにこだわる理由
現在の映画撮影では、機動力やコスト削減、ポストプロダクション作業の親和性などを踏まえ、デジタルカメラがその隆盛を極めつつある。『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督が推し進めている「RED」やフィルムカメラの老舗ARRI社が開発した「ALEXA」などがその主な代表格だ。解像度も4Kから6Kまで迫る勢いで、今では8Kが実用化に向けて本格始動しているような状況だ。実際に2016年製作のクリント・イーストウッド監督の映画『ハドソン川の奇跡』は6Kの解像度を持つデジタルカメラで撮影されている。
そんなハリウッドの潮流とは真逆を行くのがクリストファー・ノーランだ。彼は決してデジタルカメラは使用せずに、今でもフィルムでの撮影にこだわっている。我々の日常生活からもフィルムの存在はほとんど消えつつあり、デジタルカメラの進化を目の当たりにすると、フィルムにはどうしても古くさいイメージがつきまとう。
フィルムにこだわるというと、それが持つ「味」や「雰囲気」が良いからなどの感覚的な感想が多いこともあり、ともすればただの懐古主義にも聞こえてしまいそうだ。ではなぜノーランはフィルムにこだわるのか?彼も古き良きフィルムを懐かしんでいるのだろうか?意外にもその答えはシンプルだった。ノーランは言う。
「フィルムの方がデジタルより断然優れているから。」
『ダンケルク』ではそのほとんどが、65mm/15パーフォレーションのフィルムを使用するIMAXカメラで撮影されている。その名の通り通常の映画撮影で使用される35mmフィルムの倍の横幅を持ち、さらにIMAX特有の15パーフォレーション(パーフォレーションとはフィルムの横にある送り穴のこと。)でこちらも35mmフィルムの8パーフォレーションの倍と、縦横共に倍以上のフィルム面積を持っている。解像度に至っては10倍以上と言われ、上映用のIMAX70mmフィルムの解像度は何と15K相当を誇るのである。。これから8Kを実用化しようとしているデジタルカメラなんて遥かに凌駕しているのだ。
『ダンケルク』メイキング
その世界最高の解像度を誇るIMAXカメラで撮りあげた『ダンケルク』だが、その没入感たるや思わず息を呑む。ちなみに筆者は上映当時、109シネマズ大阪エキスポシティのIMAXで本作を鑑賞した。わざわざ東京から大阪まで行った理由は他でもない。IMAX70mmフィルムのデフォルトである1.43:1のアスペクト比で鑑賞できるのは、当時日本では唯一この映画館だけだったのである。上映システムの関係から普通の映画館では2.40(2.35):1のシネスコサイズでの上映となり、上下が40%近くも切れてしまっているのだ。
通常のIMAXデジタルシアターですらアスペクト比は1.90:1となってしまっており、残念ながら日本で1.43:1のフルサイズで鑑賞するには、2017年9月では大阪に行くしか術はなかったのだ。。(現在は、池袋のグランドシネマサンシャインでも上映可能)