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『ソーシャル・ネットワーク』伝説となった5分×90回超のテイク数。フィンチャーのこだわりは俳優の喜びに

(C)2010 Columbia Pictures Industries, Inc.

『ソーシャル・ネットワーク』伝説となった5分×90回超のテイク数。フィンチャーのこだわりは俳優の喜びに

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『ソーシャル・ネットワーク』あらすじ

2003年。ハーバード大学に通う19歳の学生マーク・ザッカーバーグは、親友のエドゥアルド・サヴェリンとともにある計画を立てる。それは友達を増やすため、大学内の出来事を自由に語りあえるサイトを作ろうというもの。閉ざされた“ハーバード”というエリート階級社会で、「自分をみくびった女子学生を振り向かせたい」―そんな若者らしい動機から始まった彼らの小さな計画は、いつしか思いもよらぬ大きな潮流の最中へと彼らを導く。IT界の伝説ナップスター創設者のショーン・パーカーとの出会い、そして、社会現象を巻き起こすほどの巨大サイトへの成長。一躍時代の寵児となった彼らは、若くして億万長者へと成り上がっていく。と同時に、最初の理想とは大きくかけ離れた孤独な場所にいる自分たちに気づくが―。


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途中で切るのは不可能な、重要なオープニング



 Facebookの創始者であるマーク・ザッカーバーグを主人公にした『ソーシャル・ネットワーク』は、第83回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、脚色賞・編集賞・作曲賞を受賞。作品賞の可能性も高かったが、『英国王のスピーチ』(10)に惜敗した。


 映画のオープニング。ハーバード大学2年生のマーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)と、ボストン大学に通うガールフレンドのエリカ(ルーニー・マーラ)がダイナーで話すシーンが、約5分間続く。ものすごいテンポで、とぎれなく会話が応酬され、マークに呆れたエリカは彼と別れる決意をするのだが、ここでマーク・ザッカーバーグのキャラクターが非常に鮮明に伝わり、そのキャラクターに観客は引き込まれる、見事なオープニングとなっている。



『ソーシャル・ネットワーク』(C)2010 Columbia Pictures Industries, Inc.


 このシーン、一部引いたカットがあるものの、基本的には、向かい合わせに座った2人のバストアップの切り返しである。たまにカメラが寄りになることがあるくらい。そのスピードからカットにかぶさるセリフも多く、5分のシーンを一気に撮影しているのは明らかだ。


 『ソーシャル・ネットワーク』が公開されたとき、このシーンのテイク数が大きな話題になった。その数は「99テイク」とされているが、確たる情報ではなく、実際は90〜100の間だったようである。5分のシーンを単純に100回繰り返すと、500分。つまり8時間20分。もちろん間にブレイクを挟むので、1日では終わらない長さである。脚本家のアーロン・ソーキンは「約100回のテイクを撮り終えたときは、午前3時になっていたはずだ」と告白している。



『ソーシャル・ネットワーク』(C)2010 Columbia Pictures Industries, Inc.


 しかし演じる側にとって、テイクの多さは歓迎すべきものだったようだ。ザッカーバーグ役のジェシー・アイゼンバーグにこの点を聞くと、こんな答えが返ってきた。


 「100回というのは大げさで、たぶん90回くらいだったと思う。でも、飽きるなんてことはなかった。同じキャラクターで、何度も違うアプローチを試みるなんて、役者にとってはむしろいい経験だよ。アーロン・ソーキンが書いた面白いセリフは、90回以上ものテイクでも表現を変えることができるわけだから」


 ちなみにこのときのインタビューでジェシーは「僕の従兄弟のエリックが、Facebookでプログラム・デザイナーとして働いている」と語っていた。



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