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『ソーシャル・ネットワーク』伝説となった5分×90回超のテイク数。フィンチャーのこだわりは俳優の喜びに

『ソーシャル・ネットワーク』伝説となった5分×90回超のテイク数。フィンチャーのこだわりは俳優の喜びに


フィンチャー映画は俳優にとってのビフォア/アフター



 「今の最高だったよ。完璧! さぁ、もう1回やろう!」と撮影現場でデヴィッド・フィンチャーが叫ぶのを、アーロン・ソーキンは何度も聞いたという。双子のウィンクルボスを演じたアーミー・ハマーは、あるシーンの最後にハンバーガーを「ひと噛み」するのだが、撮り終えたとき、満腹で何も食べられない状態になったという。それくらい、テイクが繰り返されたわけだ。


 『ゴーン・ガール』(14)でも平均50テイク、『ドラゴン・タトゥーの女』(11)でも100テイク撮ったシーンがあるなど、その根気と完璧主義ぶりは他の追随を許さない。クリント・イーストウッドなどとは真逆のディレクションである。




 ナップスター(今はなき音楽のファイル共有サービス)の創始者、ショーン・パーカーを演じたジャスティン・ティンバーレイクがこう付け加えた。


 「88回もテイクを繰り返していたら、ふつうはめまいが起こったりして、自分が何をしているのかわからなくなる。でもこの現場では、監督の異様な集中力によって僕ら演技者が別の次元に持っていかれる感じ。90回テイクを重ねた一日を終えて、心身ともに消耗しているはずなのに、安眠できたのは不思議だった」


 それまで映画の経験はあったものの、演技の実力が試されたのは初めてと言っていいジャスティンにとっても、フィンチャーの演出は心地よかったようだ。


 『ゴーン・ガール』の取材の際にも、ロザムンド・パイクが「私たち俳優は『フィンチャー前』と『フィンチャー後』というように、演技が変わってしまう」と語っていたように、賛否はあれど、デヴィッド・フィンチャーの「マルチテイク」は俳優の通過儀礼や修行の場なのかもしれない。


 一方で演じる側のアイデアも積極的に迎え入れるのがフィンチャーで、脚本ではザッカーバーグが仲間とともにプールに飛び込むはずだったシーンを、ジェシー・アイゼンバーグが「彼はそんなことをする性格じゃない」と、ただ眺めているだけに変更してもらっている。


 マーク・ザッカーバーグが、かつては共に仕事をした仲間、2組から訴えられるこの『ソーシャル・ネットワーク』は一応、事実を基にしているものの、脚本家のアーロン・ソーキンは、ザッカーバーグ本人に面会することはできなかった。




 この『ソーシャル・ネットワーク』には一応、原作が存在し(ゆえにアカデミー賞では「脚色賞」)、それはベン・メズリックのノンフィクション「facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男」だが、同作を出版社にプレゼンする14ページの企画書がネットにリークされたことで、フィンチャーとソーキンは映画化に踏み切った。


 つまり原作が完成する前に脚本作業が始まったのである。ホテルで執筆するベン・メズリックの横にアーロン・ソーキンが待機し、章が書き上がるごとに渡してもらったそうだ。



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