Seven© 1995 New Line Productions, Inc. All rights reserved. © 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『セブン』の徹底されたビジュアルの理由、あくまでストーリーを具現化する手段 ※注!ネタバレ含みます。
※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
『セブン』あらすじ
2人の刑事(ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン)が追うのは、怜悧な頭脳を持つしたたかな連続殺人鬼。男は七つの大罪のいずれかに該当する者を狙い、おぞましい殺人を繰り返していた。苦痛と絶望が蔓延した、雨のそぼ降る陰鬱な街を舞台に展開される傑作スリラーに、グウィネス・パルトロウも共演。恐怖の本質を知り抜いたデビッド・フィンチャー(『ファイト・クラブ』、『ゾディアック』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)が放つ、肉体と精神と魂のアクション。そして最後には観る者の心を食い破る、驚愕のクライマックスが待つ。
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監督を引き受ける決め手となったシーン
陰影の強い映像、インパクトの強いタイトルバック、スタイリッシュと称された世界観。『セブン』はビジュアル視点で語られることが多い作品だ。それは全くもってその通りで否定する余地もないのだが、『セブン』を傑作たらしめる本質的な要素は他にもある。それはずばり脚本。ストーリーだ。
映画の後半。犯人の家まで探し当て、あと一歩のところで取り逃がしたその後、何と犯人の方から警察に自首してくる。犯人ジョン・ドウ役であるケビン・スペイシーの圧倒的な演技力が醸し出す異様な雰囲気から、自首した人物が犯人に違いないことは感じつつも、この先どうなっていくのか展開が全く読めなくなるシーンだ。モーガン・フリーマン演じるサマセット刑事は自嘲気味にこう呟く「きっと奴の頭が割れてUFOでも飛び出すのさ。」
『セブン』Seven© 1995 New Line Productions, Inc. All rights reserved. © 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
当初デヴィッド・フィンチャーは、映画会社ニューラインシネマから渡された脚本を数ページ読むと、よくある刑事モノだと読むのを止めてしまったと言う。しかし、とにかく最後まで読んでほしいと懇願され、しぶしぶ読み続けたのだとか。フィンチャーはこう語る「犯人が自首するところまで読んだ時、この映画を撮りたくなった。」「すごい脚本だと思った。」
警察署内での自首シーン。署に入ってきたジョン・ドウはブラッド・ピット演じるミルズ刑事とサマセット刑事に2度声をかける「Detective(刑事さん)..」「Detective..」と。気づかない二人に対して突如大声を張り上げるジョン・ドウ「Detective!!!!」一気に緊張が高まる署内。ハワード・ショアの音楽も不安を煽るようにボリュームを上げ、映画の中も、見ている観客も、混乱の中に突き落とされてしまう。『セブン』の中でも傑出したシーンだ。
フィンチャーの脚本に対するコメントを鑑みると、いかにこのシーンに力を入れていたかが改めてよくわかる。映画はこのシーンがもたらした混乱を境に、あの救いのないエンディングに向け一気に加速していくのである。