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科学的背景に基づいたブラックホール表現への挑戦『インターステラー』

科学的背景に基づいたブラックホール表現への挑戦『インターステラー』

※本記事は、物語の詳細に触れていますので、未見の方は映画鑑賞後にお楽しみいただくことをお勧めします。

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CGスタジオと科学シミュレーションについて



 『インターステラー』では、ノーランがお気に入りのCGスタジオが、ブラックホールの表現に挑戦することとなる。98年にロンドンに設立された ダブルネガティブ社だ。ダブルネガティブは、最初は目立たない存在だったが、ノーランの『インセプション』(10)でアカデミー賞視覚効果賞を受賞したことから評価が高まった。以降、『エクス・マキナ』(15)、『ブレードランナー2049』(17)など、立て続けにアカデミー賞視覚効果賞を受賞している。14年には世界最大のポスト・プロダクションであるインドのプライムフォーカス社の傘下に加わり、バンクーバー、モントリオール、ムンバイ、チェンナイ、ロサンゼルスにスタジオを拡張させ、2500人の従業員を抱えるまでに成長した。


 今回、ダブルネガティブがまず取り組んだのは、科学的に正しいワームホールの描写である。これまでの映像作品に登場したワームホールの入り口は、『 スタートレック: ディープ・スペース・ナイン』(93)のように漏斗状(じょうご状)に表現されていた。しかしこれは、三次元構造を二次元に落とし込んだ時の模式図に基づいたものである。正しい表現は、どの方向から見ても穴に見える、三次元の“球体”になる。




 また「ガルガンチュア」と名付けられたブラックホールは、赤道方向に沿ってガスの降着円盤が光りながら取り囲んでいる。また、ブラックホールの裏側になる降着円盤も、 重力レンズ効果で屈折し、ブラックホールの極軌道方向を取り巻くように光っている。こういった表現は、“映画”では初めて描かれた(*1)ものだった。ダブルネガティブは、こういった映像を空想ではなく、ソーンから提供された方程式を解くことで、物理的にシミュレーションしている。


 「ミラー博士の星」に出現する高さ1200mにも達する巨大な波は、ガルガンチュアの引力で生じる潮の満ち引きによるもので、これに関してもソーンが物理的モデルを作り、ダブルネガティブがシミュレーションした。同社はこの他にも、「マン博士の星」のマットペインティングやクーパーステーション、土星、サターンVロケットのCGも手掛けている。


*1 重力レンズ効果によるブラックホールの正確な視覚化は、本作の遥か前に「 NHKスペシャル 銀河宇宙オデッセイ 第3集 接近・ブラックホール」(90)で描かれている。担当したのは、東京大学大型計算機センター助手(現・佐賀大工学部教授)の山下義行氏だった。ちなみに筆者もこの番組で、超新星爆発からブラックホール誕生までの素粒子の挙動シミュレーションを手掛けている。この当時、NHKの科学ドキュメンタリーは、世界中でダントツの水準を誇っていたのである。


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