(c) 2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
『インターステラー』科学的背景に基づくブラックホール表現への挑戦
この映画のテーマは何か
結果としてこの『インターステラー』は、ある程度の科学知識がないと完全には理解できない映画になってしまった。そこはノーラン兄弟も承知の上で、大衆受けする方向に逃げず、真正面から描き通したのだと思う。
筆者が解釈するこの映画のテーマは、「人類の次なるステップには何が必要か」である。これに関しては、『2001年宇宙の旅』(68)も『コンタクト』(97)も、曖昧な回答しか用意しなかった部分だ。
『インターステラー』(c) 2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
この映画では、相対性理論と量子力学を統合させた万物の理論(*3)の 完成が突破口になることを示し、その答えがブラックホールの特異点にあるというのが、クライマックスシーンの意味することだ と思われる。これにより人類は、重力を操作して巨大な構造物を 宇宙空間に容易に送り出し、新たな新天地を築ける。そしてワームホールを操って、恒星間(インターステラー)を自由に旅でき るのだ。
*3 この「万物の理論」に真正面から取り組んだ作品として、清水崇監督による3Dドーム映像『9次元からきた男』(16)がある。日本では珍しい本格ハードSF作品であり、一見の価値がある。
文:大口孝之 (おおぐち たかゆき)
1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。最近作はNHK Eテレ『コングラ CGの教室』(18)の監修。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、東京藝大大学院アニメーション専攻、日藝映画学科、日本電子専門学校などで非常勤講師。
『インターステラー』
ブルーレイ¥2,381 +税 DVD ¥1,429 +税
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