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『ゼロ・グラビティ』から探る、映画における多様な無重力表現 〜前編〜

『ゼロ・グラビティ』から探る、映画における多様な無重力表現 〜前編〜

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『ゼロ・グラビティ』あらすじ

メディカル・エンジニアであるライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は、ベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)のサポートのもと、地球の上空60万メートルの無重力空間<ゼロ・グラビティ>で、データ通信システムの故障の原因を探っていた。これが最後のミッションとなるコワルスキーは、いつものようにヒューストンとの通信でジョークを交わし、宇宙遊泳を楽しんでいた。その時、ヒューストンから「作業中止!至急シャトルへ戻り、地球へ帰還しろ!」という緊迫した命令が届く。破壊された人工衛星の破片(スペース・デブリ)が別の衛星に衝突して新たなデブリが発生し、彼らのいる方向へ猛烈な速さで迫っているというのだ。さらに連鎖反応で衛星が次々と破壊され、様々なシステムが壊滅し、ヒューストンとの通信も途絶えてしまう。シャトルに戻ろうとするふたりに、凶器と化したデブリが襲いかかった!



 アルフォンソ・キュアロンが製作・脚本・監督を務めた『ゼロ・グラビティ』(13)は、文字通りそのほとんどが無重力の宇宙空間を舞台としている。原題は真逆の『Gravity』であり、主人公ライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)が、最後にようやく地球に帰還して「重力のありがたみを知る」という場面を象徴している。その意味でこの邦題は、作品のテーマを薄れさせてしまうという意見も多かった。


 だが、ともすれば忘れられがちな宇宙映画における無重力表現に、正面から向き合った作品という意味では、なかなか良い邦題とも考えられる。そこでこれまで映画では、どのようにして無重力(もしくは低重力)を描写してきたか振り返ってみたい。


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SF映画と無重力表現



 多くのSF作品では、宇宙船内に超科学的な人工重力発生装置があって、普通に1Gの生活が可能と設定されている。だから『スター・ウォーズ』シリーズや『スター・トレック』シリーズのように、船内で事故が発生して人工重力装置が故障したり、宇宙空間に飛び出してしまうなどのアクシデントがない限り、無重力の描写は行われないことがほとんどである。




 だが『ゼロ・グラビティ』の場合、まだスペースシャトルが現役という設定であるから、 (中国の宇宙ステーション「天宮」は未完成であるが)2011年以前の出来事と考えられる。したがって未知のテクノロジーが入り込む余裕はない。


 このように映画の舞台が現代、もしくは近過去・近未来の宇宙であった場合、人工重力装置で逃げることはできないため、制作者たちは知恵を働かせてきた。では、過去の映画(宇宙SFに限らない)における無重力表現には、どのような種類があったか分類してみた。



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