『インセプション』あらすじ
鬼才クリストファー・ノーランが国際色豊かなキャストを率いて、世界各地、さらに夢の中へと観る者を誘うSFアクション大作。ドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ)は人の心が無防備な状態、つまり夢を見ている間に潜在意識から貴重な秘密を盗み出すスペシャリスト。その特異な才能は産業スパイが暗躍する世界で重宝される一方、そのために彼は最愛のものを奪われ、国際指名手配されてしまう。そんな彼に失った人生を取り戻すチャンスが。そのためには「インセプション」と呼ばれる、アイデアを盗むのとは逆に相手の心に“植え付ける”、およそ不可能とされる任務を成功させる必要があった。もしコブと仲間たちが成し遂げたなら、それは完全犯罪を意味する。だがいかに綿密に計画し、様々な特殊能力があったとしても、行動がすべて相手に読まれていては太刀打ちできない。そんな強敵が現れる予感を、コブだけが感じ取っていた。
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「この世界は本物じゃない」:現実への違和感を描いた傑作映画たち
クリストファー・ノーラン脚本・監督作『インセプション』(2010)の主人公コブ(レオナルド・ディカプリオ)が、亡き妻モル(マリオン・コティヤール)について語る場面で、こう口にする。「この世界は本物じゃない。目覚めて現実に戻らないといけない」
今見ている世界は本物なのだろうか――。そんな現実への違和感は本作の重要な要素だが、もちろんこれはノーランの専売特許ではない。何らかのSF的な技術によって登場人物が夢や仮想現実の世界に入り込む映画といえば、『トータル・リコール』(1990)、『オープン・ユア・アイズ』(1997)、『マトリックス』『イグジステンズ』『13F』(1999年)、『パプリカ』(2006)といった傑作が挙げられる。本格SFのジャンルに限定せず、異星人の特殊能力によって人間が非現実の世界を見せられるという設定なら、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)、『ダーク・シティ』(1998)も加えられよう。
『インセプション』©2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
『インセプション』はこうしたサブジャンルの集大成的な力作であり、ノーランのフィルモグラフィーの中でも画期的な1本と言える。主に映像面での『インセプション』の魅力を紹介した 前回記事に続き、今回は物語の要素やノーランの作劇術について論じてみたい。