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『インセプション』夢と現実、精神探求と身体アクション。相反する要素を融合させたノーランの知的活劇

『インセプション』夢と現実、精神探求と身体アクション。相反する要素を融合させたノーランの知的活劇


「夢の中の夢」:重層的な夢物語の源流をたどって



 作中で繰り返される「夢の中の夢」という言葉も、コブが率いるチームが同時に夢の中に入り、その夢の世界からさらに深層の夢に入り……というストーリー展開を端的に表している。先に挙げた作品群の中にも重層的な夢(あるいは重層的な仮想世界)を扱った映画がいくつかあるが、こうした物語類型の源流をたどってみよう。


 ノーランはインタビューの中で、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編集『伝奇集』(1944)からの影響を明かしていた。所収作の『円鐶の廃墟』では、円形の神殿の廃墟にたどり着いた男が、繰り返し見る夢の中で“世界”と“息子”を創造するが、やがて己もまた他者が夢見ている幻にすぎないと悟る。




 ボルヘスに先がけて、アメリカの作家・詩人のエドガー・アラン・ポーが1849年に発表した詩は、そのものずばりのタイトル『夢の中の夢』(A Dream Within a Dream)。この詩の中には、「私たちが見るもの、見えるものすべては、夢の中の夢にすぎない」という一節がある。


 重層的な夢とはやや異なるが、紀元前4世紀頃の中国の思想家・荘子は、有名な説話『胡蝶の夢』を残している。夢の中で私(荘子)は蝶になって舞っていた。目が覚めると自分は荘子だった。荘子が蝶になった夢を見たのか、蝶が荘子になった夢を見ているのか、どちらが正しいかはわからない――といった内容だ。こうした考え方は、冒頭で挙げたような「現実への違和感」を扱った作品群の源流のひとつと言えるだろう。



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