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『インセプション』夢と現実、精神探求と身体アクション。相反する要素を融合させたノーランの知的活劇

『インセプション』夢と現実、精神探求と身体アクション。相反する要素を融合させたノーランの知的活劇


“夢の共有=映画体験”というメタファー



 荘子が『胡蝶の夢』を書いた紀元前4世紀頃、古代ギリシャでは哲学者プラトンが著書『国家』の中で有名な「洞窟の比喩」を記す。洞窟の中で子供の頃から縛られ壁に向き合った人々は、実体が光源に照らされ壁に映った影だけを見てそれを“実体”だと思い込んでいる。プラトンは理性によってのみ認識されうる実体を「イデア」と考え、この比喩を通じて、人間が現実に見ているものはイデアの影にすぎないと説いた。このプラトンの思想もまた、“現実への違和感”を扱う物語の源流のひとつと言えそうだ。


 SFの手法を使い、登場人物たちが同じ夢の中でミッションを遂行するというストーリーを構築した『インセプション』に、私たちが心を惹かれるのはなぜだろう。ヒントになるのは、ノーラン監督やアーサー役のジョゼフ・ゴードン=レヴィットが語った「夢を見ることは映画作りに似ている」というコメントだ。夢は睡眠時に脳の活動が生み出すものであり、小説や映画の物語もまた脳の活動から創造される。夢を見るという行為は個人的な体験でしかないが、SFの設定により夢を共有することが説得力を持つ。




 映像作家にとって、自身のアイデアを映像化するという行為は、夢の具現化に等しい。そう考えると、私たちが映画を鑑賞するという行為は、フィルムメーカーたちの“夢”を共有していることと同じだ。“夢の共有=映画体験”というメタファーもまた、『インセプション』の隠れた魅力として挙げられるだろう。



文:高森郁哉(たかもり いくや)

フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。



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『インセプション』

ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

©2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

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