(C) 2011 Karla Films Ltd - Paradis Films sarl - Kinowelt Filmproduktion GmbH. All rights reserved. Photos: Jack ENGLISH (C)2010 STUDIOCANAL SA. All rights reserved.
実際のスパイ事件が『裏切りのサーカス』に与えた影響とは?
『裏切りのサーカス』あらすじ
東西冷戦下、英国諜報部〈サーカス〉のリーダー・コントロールは、サーカス幹部の中にソ連の二重スパイ〈もぐら〉がいるという驚くべき情報を掴む。彼はハンガリーの情報源と接触するため工作員を送り込むが失敗、責任を取って右腕のスマイリーと共にサーカスを去る。まもなくコントロールは謎の死を遂げ、引退したスマイリーの元に〈もぐら〉を捜し出せとの極秘命令が下される。ターゲットは、4人の幹部。真実に近づくにつれ、かつての宿敵ソ連のスパイ〈カーラ〉の姿が浮かび上がる。〈カーラ〉と〈もぐら〉の真の目的に気付き、最後の駆け引きに打って出るスマイリー。果たして、裏切り者の正体とは──?
Index
- 元スパイが書いた、冷戦期のリアルすぎるスパイ小説
- 頭脳戦でとことん相手を追い詰める老スパイ
- 小説やTVシリーズの大ヒットがもたらしたもの
- 当時の社会の空気を一変させた二重スパイ事件
- 裏切り者に対して注がれる、ル・カレ独特のまなざし
元スパイが書いた、冷戦期のリアルすぎるスパイ小説
英国にはスパイ小説という伝統がある。そのジャンルで名を馳せた作家たちの中には、実際のスパイ、あるいは政府の外交官としての職務を通じて、世界の裏舞台で繰り広げられるリアルな駆け引きを肌で感じてきた者も多い。あえて映画化された小説に限って言えば、ヒッチコックの『三十九階段』(映画邦題は『三十九夜』)でおなじみのジョン・バカンや『007』シリーズのイアン・フレミング、また『第三の男』などで知られるグレアム・グリーンなどはこの代表格だ。
『裏切りのサーカス』(C) 2011 Karla Films Ltd - Paradis Films sarl - Kinowelt Filmproduktion GmbH. All rights reserved. Photos: Jack ENGLISH (C)2010 STUDIOCANAL SA. All rights reserved.
その正統なる後継者と言えるのが、30年代生まれのスパイ小説家、ジョン・ル・カレ。最初の作品を発表した頃はまだ組織内で働いている最中だったらしく、彼の作家活動は関連各所も把握しており、ル・カレ自身が原稿をチェックしてもらって「問題なし」とのお許しを経た上で出版したというから、作者もお役所もどちらもかなり律儀な関係性だったことが伺える。