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実際のスパイ事件が『裏切りのサーカス』に与えた影響とは?
小説やTVシリーズの大ヒットがもたらしたもの
この映画、お膝元の英国では公開時に3週連続で興収NO.1を獲得するほどの大ヒットを記録した。映画のクオリティの高さがそのような結果を生んだのは間違いないが、一方で、そもそも英国と他国とでは前提条件が大きく異なることも頭に入れておかねばなるまい。
例えば、英国では74年に原作本「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」がベストセラーとなり、この人気を受けてBBCが79年に製作したTVドラマシリーズも大ヒットした。この時のスマイリー役を演じたのは、『スター・ウォーズ』のオビ・ワン・ケノビ役でもおなじみのアレック・ギネス。これがもう、伝説的なまでのはまり役として未だに語り継がれるほどだ(ゲイリー・オールドマンも毎週、オンタイムでTVにかじりついて視聴していたという)。
『裏切りのサーカス』(C) 2011 Karla Films Ltd - Paradis Films sarl - Kinowelt Filmproduktion GmbH. All rights reserved. Photos: Jack ENGLISH (C)2010 STUDIOCANAL SA. All rights reserved.
つまり、一定の年齢以上の英国人にとってはこの映画を、ある意味、“シェイクスピア物”にも似た伝統芸能として、二度目、三度目の形で受容することが可能なのだ。こういった場合、観客にとってあらかじめ犯人の目星はついているわけだから、多少なりとも心の余裕を持って、その特殊な世界を俯瞰し、なおかつ空気や演技、小物に至るまでのディテールを心ゆくまで堪能することができたはず。それがさらなる熱狂した土壌を生み出したのは当然と言えば当然である。