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「THU Storytelling 2025」サイモン・リー 私たちは「ストーリーテリング」を生きている【CINEMORE ACADEMY Vol.44】

「THU Storytelling 2025」サイモン・リー 私たちは「ストーリーテリング」を生きている【CINEMORE ACADEMY Vol.44】

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現実そのものを見るべき



Q:それまでのキャリアではマーケティングやWEBデザインをやっていたそうですが、一見今の仕事とは全くの別の職種のように思えます。何か生かされている部分はありますか。


リー:すべては繋がっています。芸術的な能力だけがあっても、自分をマーケティングする方法を知らなければ、それはただ自分のためだけのアートになってしまいます。2000年代初頭のインターネットが普及し始めた頃、私はネット上で自分を売り出す方法を知る必要がありました。もう誰かと握手して回るには年をとりすぎていましたし、広告を出すお金もありませんでした。だから、ネット上で「アーティストとしての自分」をマーケティングしたのです。マーケター、ネットクリエイター、そしてアーティストとしての3つのアイデンティティがチームとなり、これらすべてを可能にしました。


スマホのアプリをアップデートするように、私たちは時として自分自身のOSをアップデートする必要があります。新しいアプリ(知識や技術)を機能させるためには、OSを最新にしなければなりません。もしアーティストの根本的な信念(OS)が変わらなければ、どんな新しい知識を学んでもそれを最大限に活用することはできません。技術を学ぶ前に、何が自分をブロックしているのかを理解し、この哲学的な議論を通じてOSをアップグレードする必要があります。そうして初めて、技術をより高いレベルで活用できるようになるのです。



Q:仕事をする上で、影響を受けた映画や監督、脚本家などがいれば教えてください。


リー:実は、私は他人の作品はあまり見ないようにしています。もちろん他人のアートを楽しみ、尊重はしますが、私は常に「現実(リアリティ)」の中にこそ真の美があると考えています。書道、盆栽、写真、ダンス、音楽、などなど、美しさに触れた時に感じる感覚を大切にしています。あらゆるアーティストは、自分の作品をどんどん現実に近づけようとしているのだと思います。そうであるならば、自分の芸術を高めるために、他人のフィルターを通した解釈(作品)を見るのではなく、現実そのものを見るべきです。そうすることで思考が開かれ、新しい可能性が見えてきます。この探求に終わりはありませんが、この世の真に美しいものの源泉にどんどん近づくことができます。そうなれば、他人の作品を見ても、それは単に「同じゴールを目指す別の人間の試み」の一つとして楽しめるようになります。


ラスベガスにある「スフィア*」という巨大なシアターでの体験をお話ししましょう。最初は小さな画面だったのが、次の瞬間、巨大なスクリーンいっぱいにグランドキャニオンをドローンで空撮した映像が映し出されました。それを見た瞬間、私の頬を涙が伝いました。まるで神の手がグランドキャニオンを彫り刻んだかのように感じられたからです。風が地形を形作り、自然の力がその光景を作り上げている。これこそがアートの本質だと思いました。私たちは、私たちの周りにあるその美しさを捉えようとしているのです。特定の誰かではなく、あらゆるもの、あらゆる人から学ぶことができます。誰か一人を崇拝するのではなく、すべてを尊重したいと思っています。


Q:あなたの作品を観て最初に感じるのは“魂”です。ディテールのすごさではなく“魂”を感じてしまいます。


リー:ありがとうございます。私はアートを「詩(ポエム)」のように捉えようとしています。詩はわずかな言葉で書かれますが、私たちはその背後にあるもっと大きなものを心で感じ取ります。私はそのエネルギーを捉えたいのです。たとえ私がディテールをあえて描き込まなくても、観客自身がそこにディテールを付け加えてくれるはずですから。


*スフィア:世界最大の球体型エンターテインメント施設。外壁全体が巨大なLEDスクリーンになっており、昼夜問わず様々な映像が投影されている。内部は16Kの高解像度スクリーンと最先端の音響システムを備えた没入型シアターで、コンサートや映画など、五感を刺激する体験が可能。



サイモン・リー:コンセプトアーティスト/クリーチャーデザイナー

デザイナー&思想家。Spiderzero(スパイダーゼロ)としても知られるサイモン・リーは、ロサンゼルスを拠点とする映画・ゲーム業界のコンセプト・アーティスト&クリーチャー・デザイナー。携わってきた映画には『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』(プライム・ビデオシリーズ、2023年)、『ゴジラVSコング』、『スター・トレック BEYOND』、『マレフィセント』、『パシフィック・リム』など多数。またディズニーやドリームワークスで、講師を務める。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



「THU 2026」ポルトガルにて開催!

日程:9/28-10/3  場所:ポルトガル トロイア

公式サイト/チケット購入:https://www.trojan-unicorn.com/main-event/thu-2026


THU 公式サイト:https://www.trojan-unicorn.com/ja/bootcamp/thu-storytelling-2025

THU インスタグラム(日本語):@thu_japan

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