2025年9月に石川県加賀市で開催された、リトリートイベント「THUストーリーテリング」。世界中から集まったクリエイターへのインタビュー第四弾は、映画・ゲーム業界のコンセプト・アーティスト&クリーチャー・デザイナーとして活躍するサイモン・リー氏。『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』、『ゴジラVSコング』、『 スター・トレック BEYOND』、『マレフィセント』、『パシフィック・リム』などこれまで多くの作品を手がけてきた。
今にも動き出しそうな、まるで魂を持っているかのような作品を生み出すリー氏だが、このキャリアをスタートさせたのは38歳だという。そんな遅咲きのサイモン・リー氏は、いかにしてハリウッドでキャリアを築いてきたのか。彼の「ストーリーテリング」について話を伺った。
インタビュー第一弾:小島秀夫 “語り部”がいなくなることへの危惧
インタビュー第二弾:ジョージ・ミラー 人には物語を求める「ハードウェア」が組込まれている
インタビュー第三弾:ティム・ミラー ピッチし続ける原動力は“思い上がり”
THU Storytelling 2025 | JP version
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デザインを始めると物語が降りてくる
Q:このイベントは「ストーリーテリング」がテーマですが、参加した感想をお聞かせください。
リー:素晴らしいですね。実はストーリーテリングは、私が普段のクラスで教えていることそのものなんです。誰かと新しく出会った時、私たちはその人の顔や服装を見ますが、会話からその人の歴史や物語を知ることで、その人物はより一層興味深い存在になります。これはキャラクターを理解しようとする時も同じで、キャラクターそのものよりもその背景にある物語を知ることの方が面白い。アートに関しても同様です。私は15年以上プロのアーティストたちを教えてきましたが、多くの人は「どうビジュアルをデザインするか」という技術的なことばかり集中しがち。しかし、ストーリーテリングの思考を活性化させることで、ビジュアルデザインはより目的を持ち、意味のあるものになるのです。
Q:あなたの作品からは動きと物語が溢れていますが、いつも事前に物語を考えてから作り始めるのでしょうか。
リー:いいえ。デザインをしている最中に物語を作り上げているんです。つまり、同時に進行しています。あらかじめ物語を用意して取りかかるのではなく、まず手を動かし始め、その瞬間に身を置き、自分自身がキャラクターとして生きているところを想像します。そうすると、物語が自分に降りてくるんです。それは非常に興味深く、驚きに満ちたプロセスです。なぜなら、私自身が初めてそのキャラクターに出会うことになるからです。制作の最後にキャラクターが姿を現した時、それは私にとってもこの創作物との初対面になります。
私が決断を下し、選択をし、物語を生み出していく中で、その物語の背後にあるものは、実は私自身の一部であることに気づきました。この種のストーリーテリングやキャラクターデザインを通じて、私は違う方法で、初めて自分自身の一部に出会っているのです。それはデザインを通じた一種の瞑想(メディテーション)のようなものです。創作に参加しながら、同時にそれを観察している。そのプロセスの中で自分の一部に気づくことで、これまで経験したことのないような明晰さを得ることができます。このプロセスは私にとって非常に楽しいものです。またそれによって、「リラクゼーション」も副産物の一つとして得ることができます。