2025年9月に石川県加賀市で開催された、リトリートイベント「THUストーリーテリング」。世界中から集まったクリエイターへのインタビュー第三弾は、『デッドプール』(16)『ターミネーター:ニューフェイト』(19)を監督したティム・ミラー。自身が率いるCG制作会社BLUR STUDIOのプロデューサーとしても活躍するミラーは、ハリウッドのスタジオに幾度となくピッチ(企画提案やコンペ)し続けてきたという。実際、ミラーがデヴィッド・フィンチャーと共に制作した人気コンテンツのNetflixアニメアンソロジーシリーズ『ラブ、デス&ロボット』も、当初は全然企画が通らなかったとのこと。ミラーやフィンチャーのようなトップ・ディレクターたちの提案ですら、そう簡単にはGOが出ないのだ…。
そんなティム・ミラー監督は、いかにして企画を提案し続け作品を生み出してきたのか。話を伺った。
インタビュー第一弾:小島秀夫 “語り部”がいなくなることへの危惧 はこちら
インタビュー第二弾:ジョージ・ミラー 人には物語を求める「ハードウェア」が組込まれている はこちら
THU Storytelling 2025 | JP version
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常に原作に忠実でありたい
Q:THUに参加してみていかがですか。
ミラー:とてもユニークなイベントですね。参加者の中にはすでにアーティストとしての地位を確立している人たちも多く、非常にレベルが高い。おかげで自分の話す内容を簡略化する必要がありません。分野が一つに絞られていない点もユニークで、画家、CGクリエイター、彫刻家など、多種多様な分野の人が集まっているのが面白いです。
Q:映画を作る際、原作があるものを選ぶことが多いそうですが、どんな物語に惹かれますか。
ミラー:私はポジティブなので、ハッピーエンドになる物語が大好き。他には、インスピレーションを与えてくれる物語や、ヒーローやヒロインの物語が好きですね。ヒーローは苦難を経験すべきだと思いますが、最終的には勝利を収めるような、逆境における強さを描いた物語に惹かれます。
Q:すでにある原作を映像化する際に気をつけていることはありますか。
ミラー:原作者とは多くの信頼関係を築いています。私にとって彼らはロックスターのような存在なんです。彼らも私たちを信頼してくれています。私自身、その物語に惚れ込んでいるので、映画化に際して内容を変えることには消極的です。自分が元の語り手よりも賢いなんて思ってもいないので、常に原作に忠実であろうと努めています。
もちろん、予算や尺の都合で物語を圧縮したり、一部をカットしなければならないこともあります。しかしそうなった場合でも、私は物語がどう構成されているかを理解しているので、物語全体を台無しにすることなく、変更が必要な箇所だけをうまく調整できます。例えて言うと、「セーターがどういうふうに編み込まれているかわかっているから、毛糸を引っ張ったとしてもダメにはならない」みたいな感じ。大抵は、原作者に直接相談して「この変更でいいか」と確認できるので、原作者自身も映画化における意思決定プロセスに携わっていることになります。
Q:好きになった物語を、具体的にどのように映像化していくのでしょうか。
ミラー:作品の長さによって違いますね。短編の場合は、まずは文章(小説)を脚本化することから始めます。その際に、小説家特有の余分な言葉を削ぎ落とし、必要な部分だけを残していきます。小説には映画では表現できない「心の中の声」などが含まれてることが多い。それが物語にとって重要なら、それをビジュアルで見せる方法を探したり、能動的な対話に置き換えたりする必要があります。
『ラブ、デス&ロボット』で『巣 原題:Swarm(群れ)』というエピソードを監督しました。その原作で私が一番気に入っていたのは、科学者である登場人物たちが「なぜ知能が進化と生存にとって最良の戦略ではないのか」について語る場面でした。そのやり取りが大好きだったのですが、いざ映像にすると退屈だったんです。それで、私が大好きだった部分はすべて圧縮しなければならないことに気づきました。ただ人が話しているのだけを見ても、それほど面白くはなりませんから。こうした“気づき”に対しては、実際に作り始めてから適応させていくしかありませんね。