テストスクリーニングは大好き
Q:企画が通って映画を作った時に、あなたにとってのゴールはどこになりますか。作品が完成した時(自分が観た時)ですか、それとも観客が観てその反応がわかった時でしょうか。
ミラー:物語を選ぶのは自分のためですが、それを作るのは観客のためです。観客のためでなければ作る意味がありません。映画を作るときには、皆さんご存知の「テストスクリーニング」があります。多くの監督はこれを嫌がりますが、私は大好き。何かを作っているときは客観性を失いがちなので、人々の視点を聞けるのは素晴らしいこと。もちろん、すべての意見に従う必要はありませんがね。
『デッドプール』を作っていた時に、経験豊富なエディターに聞いたんです「テストスクリーニングから何を学び取ればいいんだ?」と。すると彼は「パターンを探せ」と言ったんです。一人が「このキャラは嫌いだ」と言っても無視していいが、10人が同じことを言ったら耳を傾けるべきだと。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』での例を挙げましょう。ダニー・ラモス役のナタリア・レイエスが兄弟と父の死について語るシーンがありました。彼女は素晴らしい演技を見せてくれて、非常に感情的に泣き崩れ、演技として完璧でした。しかし、テストスクリーニングでの観客の反応は違いました。観客はヒーローにはもっと強くあってほしいと思っていたんです。私はとても素晴らしく感情的で強いシーンだと思っていましたが、泣くシーンは観客にはあまり好意的に受け入れられませんでした。最終的に、そのシーンでは感情を抑えた方の演技を採用しました。するとテストスクリーニングの評価が上がったんです。
この話を別の映画監督にしたところ、彼は私に呆れていました。「一番いい演技の方を選ぶべきだ、観客なんて気にするな」と。私は彼に聞きました。「私がその演技を好きだからといって、観客に好かれないキャラクターにすべきなのか」と。その監督の意見は私には間違っているように思えました。俳優のためにも、映画のためにも、そして、より観客に好まれる映画を作ろうとする監督としての私自身のためにもならないからです。
BLUR STUDIO Reel 2025
Q:自分の作りたいものを信じて提案し続けるということは、若いフィルムメーカーにとってすごく勇気になると思います。若い人たちにアドバイスがあれば是非お願いします。
ミラー:若い頃は受け入れがたいかもしれませんが、これは「学習のプロセス」なんです。最初はまず成功しません。1回目、2回目、あるいは5回目もダメかもしれない。でもそれは通らなければならない道なんです。だからピッチを学びの場だと捉えて、毎回改善していくことですね。 もう一つ、客観的な事実として認めにくいことですが、若い頃は自分が思っているほど、自分のアイデアは良くないことが多い。もっと良くなるということに気づき、その道を歩んで学ばなければなりません。
ウチ(BLUR STUDIO)には数名の監督がいて、私が彼らの作業を確認することがあります。非常に才能のある35歳の若手が、私のレビューでひどく落ち込んでいたことがありました。私は彼を励まそうと「私が35歳だったときに何をしていたか見せてあげよう」と言ったんです。私が35歳の時に監督したものはもう本当にひどい出来でした。私は彼に言いました。「見てくれ。君のやっていることは素晴らしい。35歳の時の私より君はずっと先を行っているよ。これは一つの道のりなんだ」と。 ジェームズ・キャメロンの最初の映画だって、『ピラニア2(殺人魚フライングキラー)』ですからね(笑)。そういうことなんです。
ティム・ミラー(映画監督/映画プロデューサー)
大ヒットした監督デビュー作『デッドプール』(16)と『ターミネーター:ニューフェイト』(19)で知られるアメリカの映画監督。VFXアーティスト兼アニメーターとしてキャリアをスタートし、1995年にBLUR STUDIOを設立。同スタジオは急速に世界的に有名なCGアニメーション会社へと成長し、ゲーム、テレビ、映画業界向けに短編映画やシネマティックコンテンツを制作している。2019年には、ミラーとデヴィッド・フィンチャーが、BLUR STUDIO でNetflixアニメアンソロジーシリーズ『ラブ、デス&ロボット』を共同制作。同作品はエミー賞13部門、アニー賞8部門を受賞した。また、最近リリースされたPrime Videoのゲームアンソロジーシリーズ「シークレット・レベル」のプロデューサーも務め、現在は複数のテレビ・映画プロジェクトを企画中で、BLUR STUDIO独自のビジョンと才能を活かしてエンターテインメント業界を形成し続けています。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
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