原動力は“思い上がり”
Q:講演でお話されていたピッチについてお聞かせください。作りたいと思った企画は絶対に諦めないそうですが、その原動力はどこにあるのでしょうか。
ミラー:「思い上がり」かな(笑)。自分が正しいという信念、そしてこの物語を世界が見たがっているという信念です。以前、友人の監督に言われましたね。「ティム・ミラーはよく間違えるけど、自分を決して疑うことはない」と(笑)。
Q:ハリウッドの超大物プロデューサーなども相手にして、何百回もピッチを行ってきたそうですが、経験を積んでいくとピッチの最中にその成果は予想できるようになっていくものでしょうか。
ミラー:相手が100万回もの(笑)ピッチを聞いてきた大物のときのことです。相手の目がスマホに向けられたり、関心が逸れたりするのを見た瞬間に、私は「あ、これはダメだ」と察しました。私は相手の熱意に支えられて自分の熱意を燃やすタイプなので、相手を失ったと感じたら、立ち止まって理由を聞くか、さっさとその場を去りたいんです。
また、とあるピッチでの話ですが、コンセプトアートを持って行くと、相手が全く興味を持っていないことが分かりました。私がピッチを終えると、彼は「このコンセプトアート、なぜ背景をオレンジにしたんだ? 映画の中でテーマに関わるのか?」と聞いてきました。私はこう言ったんです。「いや、ただのコンセプトアートですよ。この会議のために適当に作っただけです。でも、あなたは買いたくもない車を私から売りつけられているような気分なんでしょう。だからもう終わりにしましょう」と(笑)。彼はショックを受けていましたね。これは後で聞いたのですが、クライアントは若い女性が主人公の物語が好きではなかった。その企画の主人公は14歳の少女だったんです。「なぜ、そもそもこの会議をセッティングしたんだ⁉」と思いましたね。

企画を出している最中(ピッチの場)では、多くの人は熱心に聞いてくれます。向こうも礼儀正しくありたいですから。もちろん本当に気に入ってくれている場合もあるでしょう。しかし、映画化に至らない理由はたくさんあります。スター俳優がつかまらない、そのジャンルにしては予算が大きすぎる、もしくは、その場にいなかった上司に報告した際に十分な熱意が伝わらなかった、などなど。また、大抵の場合、彼ら担当者には「決まったジャンルの企画を探す」という明確な任務があり、単にこちらの提案がそれに合致しなかったということも多いです。
私自身もプロデューサーとして企画を受ける側になることも多いのですが、もしその企画が気に入らなければ、その場で相手に伝えるようにしています。これは業界では珍しいことですが、良いことだと思います。なぜなら、彼らはその瞬間に理由を理解し、次回はより良く、あるいは違うアプローチができるようになるからです。もしくは、私が重要な何かを誤解している場合もあり、その場で説明を受けて考えを変えることもできます。理由もわからず拒絶される儀式のような対応よりも、議論ができるチャンスがあることを相手も感謝してくれていると感じます。