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『脛擦りの森』人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫 クリエイティブとは自分に正直であるべき【CINEMORE ACADEMY Vol.48】

『脛擦りの森』人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫 クリエイティブとは自分に正直であるべき【CINEMORE ACADEMY Vol.48】

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映画制作は「シングルモルトよりもブレンド」



Q:物語にこだわる人、ビジュアルにこだわる人、映画監督にはいろんなタイプがいて、柘植さんも多くの監督とお仕事をされてきました。映画制作における監督とのコラボレーションとは、柘植さんにとってどのようなものなのでしょうか。


柘植:これまで様々なタイプの監督とご一緒してきましたが、私自身のスタンスはいつも変わりません。映画制作では、スタッフ全員が作品に対して献身し、脚本を読んで自分の中に現れたビジョンを正直に物質化する必要がある。その態度を維持し続けられるかが重要であり、監督のタイプによってそれが変わることはありません。


確認の際、文脈が合ってさえいれば、他は全てお任せしてくださる監督もいれば、事細かに修正をかけてくる監督もいます。修正が入るのは、私が提案したアイデアを監督自身が自分の事として腹落ちさせるためのプロセスなので、私としては全く問題ありません。根幹が変わらなければ同じ表現だと考えています。私たちは一種の「夢」を作っているようなもの、夢は一つに固定化されませんからね。


映画におけるリアリティとは、写実主義的なリアリズムではなく、そこに生じる真実味としてのリアリティだと思います。監督、役者、美術など、様々な方の考えを通過し受け取って形にすることで、どんなに突飛な衣装でも最終的には馴染むものになる。私がすべてを決めるというよりも、多くの人とのやり取りを通じて皆の総意を形にするのが好きなんです。お酒に例えるなら、シングルモルトよりもブレンドのように混ざってクォリティーを生み出す方が好き、といった具合でしょうか。



柘植伊佐夫氏デザイン画


Q:柘植さんの描かれるデザイン画はそれ自体が一つの作品のようでもあります。画を描くこと、またそれを実現化することの楽しさや難しさはありますか。


柘植:あくまでデザイン画は、「人物デザインをこう考えている」と周囲に伝えるためのツールであり、純粋芸術ではありません。だから詳細に描き込むというよりも、いつもコンセプチュアルな部分に寄って描いています。


デザイン画を描いていて楽しいのは、ビジョンが人間単体ではなく“どんな場所にいてどんな色をしているのか”という、一体化した情景として見えてくること。脚本を読んだ上で、自分の中にしかない映像を絵に留めて確認できる点も良いですね。映像化のプロセスでは、チームの方々がその絵の雰囲気に引っ張られていくことも興味深い。環境が絵に近づいていく一種の「予知性」のようなものも起こり得ます。人を描いてはいますが、情景を含めて「ここで起こることはどういうことなのか」を描いている感覚もありますね。


人物を表す上では「この人はこういう色」という、オーラのようなものを表現することも大切です。人が介在するということは、綺麗事におさまらない“生々しさ”が出てきます。私自身は、生々しさだけが表されるのは避けたい気持ちもあるのですが、それは人間の中にある避けようのない面でもある。絵を描いていくと「この人はこういうものを持っているんだ」という事前の認識にもつながっていきます。他者との共有、予知性、自己認識、この三つが、デザイン画の持つ役割だと思います。



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人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫

1960年生まれ、長野県出身。2008年以降、「人物デザイン」というジャンルを開拓し、扮装を総合的に生み出す。主な作品に、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(10)、『平清盛』(12)、ドラマ『岸辺露伴は動かない』(20‐24)、映画『シン・ゴジラ』(16)、『翔んで埼玉』(19)、『シン・仮面ライダー』(23)、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)、『はたらく細胞』(24)、『10DANCE』(26)など。岸辺露伴シリーズ最新作『泉京香は黙らない』が2026年5月放映予定。著書に、『龍馬デザイン』(2010年/幻冬舎刊)・『さよならヴァニティー』(2012年/講談社刊) ・『美人』(2025/サンマーク出版刊)がある。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『脛擦りの森』

TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

配給:シンカ

©『脛擦りの森』プロジェクト

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