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『ドランクヌードル』ルシオ・カストロ監督 虚構=フィクションの力を信じてみる【Director’s Interview Vol.545】
エリック・ロメールからの影響
Q:映画は、4つの章から構成されています。現在から始まりフラッシュバック形式で進んでいくかに見えて、最後の章ではまた現在に戻り、かと思うとさらに深い過去に進むような、とても奇妙な構成です。必ずしも一本の線で繋がるのではないこのユニークな構成は、どのように作っていったのでしょうか。
カストロ:それに関しては、自分の脚本の書き方や筆致に関係しているかもしれません。脚本を書くときはいつも、最初はひとつの物語から出発するのに、書いているうちに別のことに興味を持ち始めてしまうんです。そうして、新たに興味を惹かれた物語の方を掘り下げながら、先に書いていた物語とどう繋げようかと考える。そんなふうに、何度も脇道に逸れながら脚本を書いていくのが私のスタイルです。
ときには自分でも書くべき物語を見失い、どう書き進めるべきか完全に迷子になったりもします。でもその過程に、私はすごくわくわくするんです。試行錯誤するうちどうにかして元いた場所に戻れたり、思いがけず、先に語っていた物語との繋げ方を見つけたりする。そのときには信じられないほど清々しい気持ちになります。

『ドランクヌードル』© 2025 Lucio Castro Inc.
この映画は、最初はニューヨークにやってきたアドナンの日常の話から始まり、徐々に別の時間、別の場所へと舞台が移っていき、最終的には、時代も場所もまったく異なるところへと向かっていきます。その過程を、観客のみなさんも一緒に体験しながら楽しんでもらえたらと思います。
それと『ドランクヌードル』を作るうえでは、エリック・ロメールの『レネットとミラベル/四つの冒険』(86)からも少し影響を受けています。まさに4つの物語から構成されている映画ですから。
Q:夏を舞台にしたこの映画は、たしかにエリック・ロメールの映画を彷彿とさせます。監督はやはりロメール映画が大好きなのでしょうか。
カストロ:ええ、もちろん。ロメールの映画はどれもシンプルな設定で、ちょっとした出会いや何気ない会話によって成り立っています。でも最終的にはとても遠い世界に連れていってくれる。最初の入り口はとても小さく素朴なものなのに、物語が進むうち、人々の感情や欲望がずっと深いところまで掘り下げられていく。それが、ロメール映画の大好きなところです。

監督/脚本/編集:ルシオ・カストロ
1975年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。映画監督、ファッションデザイナー。ブエノスアイレスの実験映画学校で美術学士号(BFA)を取得後、ニューヨークへ移り、ニュースクール大学で映画を学ぶとともに、同大学のパーソンズ美術大学でファッションを学ぶ。長編デビュー作『世紀の終わり』(19)は、MoMAの〈New Directors/New Films〉でプレミア上映され、IndieWireで「21世紀のベスト・クィア映画のひとつ」と紹介されるなど高く評された。日本では、2021年の第29回レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~で上映。続く長編第2作『After This Death(原題)』(25)は、第75回ベルリン国際映画祭Berlinale Special Gala部門に出品。3作目となる『ドランクヌードル』(25)は、第78回カンヌ国際映画祭ACID部門でプレミア上映され、ニューヨーク映画祭など各国の映画祭に出品された。現在は、ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アーツの大学院映画プログラムで非常勤講師として教鞭も執っている。
取材・文:月永理絵
映画ライター、編集者。『朝日新聞』『週刊文春』『週刊エコノミスト』などで映画評やコラムを連載中。ほか映画関連のインタビューや書籍・パンフレット編集など多数。著書に『酔わせる映画 ヴァカンスの朝はシードルで始まる』(春陽堂書店)。
『ドランクヌードル』
5月1日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
配給:ミモザフィルムズ
© 2025 Lucio Castro Inc.
Photo: ©︎Zelmira Gainza