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19歳の初監督作『あみこ』を提げベルリンから世界へ。山中瑶子監督の確信とは ~後編~【Director’s Interview Vol.10.2】

19歳の初監督作『あみこ』を提げベルリンから世界へ。山中瑶子監督の確信とは ~後編~【Director’s Interview Vol.10.2】

 19歳で撮った初監督作が、ベルリン映画祭を皮切りに世界へと拡散していった『あみこ』。恐るべき新人監督の正体を探るロングインタビュー、後編です。


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映画は“楽しく撮るもの”じゃない



Q:キャストをSNSで探したというのは、身近にはいないような撮りたい人材を見つけたいという気持ちだったんでしょうか?


山中:そうですね。オーディションで来る人も限られてるというか、どういう人が来るのかあまりイメージが湧かなかったんです。顔が一番大事だったので、イメージに合う顔というか目というか、それを自分から探しに行った感じですね。


Q:主演のお二人は、映画は初出演ということですが、プロフィールに「役者志望」と書いていた人たちなんですか?


山中:あみこ役の春原愛良は確か、もともと舞台の女優を目指してる子でした。ちょっとだけ舞台に出たことがあったみたいで。そういう人って役者志望やちょっと経験ある人同士でTwitterでフォローし合ったりしてるから、どんどん探していけるんですよ。わたしと同じように、まだ経験の浅い方たちの中から探しました。自分が初めて撮るから、相手が自分よりも現場に慣れていると、一歩踏み出せないことがあるんじゃないかと思ったので。


 アオミ役の大下ヒロトは確か「売れない役者」って書いてあったんですよ。でも『あみこ』が映画出演初めてでしたし、舞台もドラマもやったことないって言ってたんで、たぶん本当に役者の仕事は初めてだった。売れない役者と言いつつ「まだやってないじゃん」って思いながら会ってみたんです。そしたら腹の底にとにかく何かを表現したいという気持ちを抱えてて、頼もしかった。




Q:ほぼ写真だけで決めたということですが、主演のお二人がすごく魅力的でした。あみこやアオミくんの演技は演出を通じて引き出したのか、それともラッキーなことに演技の上手い人材を引き当てたのか、どっちだったんでしょうか?


山中:春原さんは、どんな芝居をするのも億劫がらないんです。だから、わりと辛辣な演出にも応えてくれる。ほとんど言った通りになんでもやってもらいました。


Q:実質の撮影日数が12日だったと聞いたんですが、事前にリハーサルは?


山中:それは結構やりました。春原さんが撮影前日にわたしの家に泊まったりすることもありましたね。最初は「あみこって、こういうキャラクターだから、この時はこういう気持ちで……」みたいにこと細かに説明していたんですが、彼女はあまりピンときてなくて。なので具体的に動きを指示する演出に、早い段階で切り替えましたね。心情説明をしても、それを言われたから何かを出せるというタイプの子では無い気がしたんです。簡単に動きだけを言ったほうがわかりやすくやってくれるので、「ふくれた顔をして」みたいな感じで演出していたと思います。


Q:あみこ役の春原さんを舞台挨拶で拝見したんですが、あみこみたいな声質や口調で話す方ではないことに驚きました。


山中:全然違うんですよ。誰もがびっくりするくらい違う。 監督のわたしですら、本当に彼女があみこを演じたのかと、いまでもたまに驚いてしまう(笑)。実はまだわたしが思っているあみこを共有できていないかも知れないし、別にそれでもいいかなと思います。それでできちゃう子ですからね。天然で素晴らしいです。


Q:あみこというキャラクターや口調は、本読みをしている段階で作り上げていったのでしょうか?


山中:シナリオの時点でこういう風に喋るだろうというイメージは決まっていました。それは指示をしましたけど、最初に会った時に彼女の声がいいなと思ったんです。声もあみこに合っている。彼女に合わせて変わったのは、後半の東京パートの流れと、編集のテンポと、あとそれらはやっぱりフィジカル面から来ていますね。


 彼女の身体性が豊かな映画になっていると思うんですけど、最初はそんなつもりはなかったんです。もっと静かないわゆる邦画らしい仕上がりになっていたかも知れない。それでも突出してできることがあると思ってたんですけど。


 もし春原さんががすごくあみこにシンパシーを感じて、すべてシナリオを理解していたら、安心してしまって、カメラもフィックスが多くなったり、あんなに動かしたりしなかったと思います。あみこと彼女がぜんぜん違う人間だったのが良かったかも知れないですね。シナリオを読んで「まさにあみこは私だ!」って思うような子が演っていたら、今のような仕上がりにはならなかったと思います。全くの別物が出来てた。




Q:アオミくんを演じた大下ヒロトさんもはまり役で、人前で演じるのはほぼ初めてだったとは信じがたいです。


山中:彼も実際はアオミくんみたいな感じじゃないんです。一番最初に会った時、ぜんぜん目を見てくれないし、話もそんなにしてくれなくて、すごくアオミくんぽいなと思ったんですよ。トガってて、取っつきにくそうで。断られるんじゃないかなと思うくらい懐いてこなかった。「まあちょっと考えてみてください」みたいに言ったら「あ、でも脚本面白いんでやります」みたいな返事だったんですけど、熱い感じではなかった。何を考えてるのか掴めなかった。


 でも、次に会った時から豹変してました。本人は「あの時はアオミくんっぽくして行ってみた。よく出来てたでしょ?」と笑ってましたね。それからはずっと、活発で無邪気な普段の大下くんがいるんですよ。


Q:最初は戦略として、役に入り込んで現れたんですね。


山中:はい。最初に作り込んできたのがあまりにもアオミくんだったので、スキップして帰った覚えがあります。


 私、にぎやかな現場があまり得意じゃなくて、和気あいあいとしているのは居心地が悪いんですよ。それまで何回かお手伝いに行った現場で感じたことなんですけど。映画って、あまり“楽しく撮るもの”じゃない気がしてるんです。わたしがそう出来ないだけなんですけど。実際、思い返してみたら楽しかったなくらいがちょうど良くて、やってる時は楽しんで撮る余裕がなかったです。だから「現場を明るく盛り上げていこう!」みたいな気概はいらなくて、和気あいあいとしなさそうな人っていうのも、選ぶ時の基準にありました。そうしたら結果的に大下くんがちょっと盛り上げちゃってた(笑)。スタッフの気が散っちゃうんですよね。するとわたしがやりにくい。本人はそのつもりなく居るので、彼の魅力から起こることなんでしょうね。大下くんを呼んで「スタッフと不必要に喋らない!」って言ってましたね(笑)。



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