映画監督としてやっていけるだけの、強度のある作品を作る
Q:新作として山戸結希企画・プロデュースの短編オムニバス『21世紀の女の子たち』に参加されていますけど、もう作業は終わったんでしょうか?
山中:はい、完成しました。
Q:そちらの撮影はどうでしたか?
山中:難しかったですね。しんどかった。ちょっとあまり思い出したくない(笑)。現場の経験不足を痛感しました。いろいろな人に支えてもらったし、かなり勉強になりました。『あみこ』はキャストもスタッフも意図的に大人を排除してマイペースに作ったのですが、今回はうってかわって大人ばかり、現場には25人近く大人がいましたね。今思い返せば全部楽しかったです。
Q:『あみこ』公開に向けてのあいさつ文では「素直に言うと、ずっとどこかでこうなると思っていました」と書かれています。今の状況や道筋については、決して想定外ではなかったということですよね?
山中:まあ、早いとは思いましたけど(笑)。さすがに今の状況を一作目でとは思っていなかったです。ベルリン国際映画祭以降、毎月一回は海外の映画祭に行っていて、帰国するたびに生活のリズムが崩れますし、立て直すのに時間がかかる。半年経っても身体は慣れてこないんですよ。バイトに行くと元に戻るんですけど。
でも「こうなると思っていた」というのは、夢見がちというより、そうでもしないと(映画監督として)やっていけないだろうという現実的な意味でもあるんです。また、それくらいの強度のある作品を作れるだろう、と(笑)。作らなきゃと思いますし。現実的に、日本だけでは厳しいだろうみたいなのはありますね。海外で評価されて、そのままそっちで撮る人もこれからどんどん増えていくと思いますし。わたしは別に場所はどこでもよくて、そしてきっとわたしは毎年次々に量産できる職人のような監督にはなれないと思うので、自分が素敵だと思える作品を生み出せる環境を作り出したり見つけたいです。
最近少しずつ映画を作って世の中に出すということがどういうことなのかわかってきて。
Q:それは「大人の世界が見えてきた、汚い!」っていう感じですか?
山中:汚い!とまでいかないですね。「どうせ汚いならもっと振り切ればいいのに!」って思います。せせこましいと言うか(笑)。余裕がない感じがします。この話題は、「何も知らないだろお前」って感じもするので終わらせますけど、わたしは誠実でありたいです。誠実な人が報われる社会であってほしい。「そんなのは無理」とは言いたくない。
Q:とはいえ、素晴らしい映画監督デビューを飾ったと思うので、まだまだ映画を続けていって欲しいです。
山中:はい、まだ大丈夫です(笑)。次わたしが何を撮るのか、自分でも楽しみです。
(前編はこちらから)
監督:山中瑶子 Yoko Yamanaka
1997年生まれ、長野県出身。初監督作品『あみこ』がPFFアワード2017で観客賞を受賞。20歳でベルリン国際映画祭に招待され、同映画祭の長編映画監督の最年少記録を更新。同作でポレポレ東中野の一週間レイトショー動員記録を大幅に塗り替える。新作は山戸結希プロデュースのオムニバス映画『21世紀の女の子』(2019年2月公開予定)。
取材・文:村山章
1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。
(c)Yoko Yamanaka