©ATELIER DE PRODUCTION - AGAT FILMS & CIE - ARTE France CinNa
『イート・ザ・ナイト』キャロリーヌ・ポギ監督 & ジョナタン・ビネル監督 現実の延長としての仮想世界を描く【Director’s Interview Vol.551】
観客自身がキャラクターの余白を埋める
Q:現実世界はフィルム・ノワールのテイストで描かれていましたが、意識されたものはありましたか。
ビネル:現実世界の描写で複雑だったのは、フィルム・ノワールに加えて、メロドラマや家族のドラマなど、多くの欲望や異なる要素をハイブリッドさせたいという思いがあったことです。脚本執筆中にはデヴィッド・サイモンのドラマシリーズ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』(02〜08 TV)を見直し、大きな影響を受けました。多様なキャラクターが登場し、非常にリアルな土台を持ちつつ、神話的で現実から少し離れたような側面があることが深く印象に残りました。非常に様式化されつつも、しっかりと地に足のついた映画として、そのような関係性を作り出そうとしました。
私たちの以前の作品はもっとバーチャルなアプローチで、現実を仮想のように扱っていましたが、今回は社会的な土台にしっかりと根を下ろしたかった。舞台となったフランス北部のル・アーヴルは工場が立ち並ぶ工業都市で、光は非常に暗く、空も重く立ち込めています。フィルム・ノワールのスタイルがすでにその街自体に存在しており、映画にスタイルをもたらしてくれる点が気に入りました。

『イート・ザ・ナイト』©ATELIER DE PRODUCTION - AGAT FILMS & CIE - ARTE France CinNa
Q:パブロやアポを取り巻く周辺のキャラクター(兄妹の父親や、ギャングのルイとその父親、殺し屋のエンジェルなど)も、登場シーンは短いながらとても奥行きを感じました。
ポギ:興味深い意見ですね。彼らを単なるクリシェや物語の進行に便利なだけのキャラクターにならないよう気を配っていました。この映画において重要だったのは、すべてのキャラクターが何かを失いつつあるということです。アポリーヌが「ダークヌーン」を失うだけでなく、ルイやエンジェルも死にゆく老人に別れを告げ、失おうとしています。登場人物たちが何かを手放し、別れを告げる姿を描くことで、彼らに深みを与えることができたのだと思います。彼らについて多くを語らないことで、観客が自分の感情でその余白を埋められるようにしたことが、深みを感じさせる理由だと思います。
最も登場シーンが少ないのがアポリーヌの父親ですが、彼は機能しなくなった崩壊しつつある家族の象徴。電話でのシーンと彼が帰宅するシーンだけで、彼の存在感を十分に込めなければならなかったので、編集はとても難しかったですが、なんとかベストを尽くしました。
Q:今後の活動について教えてください。海外での映画制作も視野に入れていますか。
ビネル:今のところは、主にフランスで活動していく予定です。もちろん海外での映画制作を夢見てはいますが、私たちの映画作りは、自分の身近なもの、よく知っている場所や親しみを感じる地域から出発することが多い。そのため、現時点では親密な場所や、自分たちと同世代のキャラクターを描くことに重点を置いています。とはいえ、映画は世界を巡りますし、私たちの作品が海外でも反響を呼ぶのは、それが単なる「フランスのテーマ」に留まらない、普遍的に響く要素を持っているから。そういう意味では、「ダークヌーン」自体がすでに国際的なテリトリーだったと言えるかもしれません。
『イート・ザ・ナイト』を今すぐ予約する↓

監督/脚本:キャロリーヌ・ポギ & ジョナタン・ビネル
ともにフランス生まれ。ジョナタン・ビネルは1988年にトゥールーズに、キャロリーヌ・ポギは1990年にアジャクシオに生まれる。二人は共同制作を始める前に、それぞれ別々にいくつかの映画を監督していた。初の共同作『As Long as Shotguns Remain』は、ベルリン国際映画祭短編部門で金熊賞を受賞。続く『Our Legacy』も同映画祭に選出された。2018年には、カンヌ批評家週間に選出された短編『アフター・スクール・ナイフ・ファイト』が、オムニバス映画『Ultra Rêve』の一編として劇場公開された。彼らの作品は、フランス国内外の映画祭、美術館、ギャラリー、映画館、テレビ、オンラインなどで定期的に上映されている。現在はパリ、コルシカ島、トゥールーズを拠点に活動している。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『イート・ザ・ナイト』
5月23日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー
配給:グッチーズ・フリースクール(提供:JAIHO)
©ATELIER DE PRODUCTION - AGAT FILMS & CIE - ARTE France CinNa