PG12で通った理由
Q:山田に対峙する刑事の国枝も直情型のキャラクターです。国枝はどのように作られたのでしょうか。
城定:元々、「蔵之介さんがいい」と二朗さんが言っていて、脚本を直している段階で蔵之介さんを想定していました。当初、警察側はそんなに描かれていなかったので、後から足した部分も多いですね。
Q:佐藤さんとMEGUMIさんのラブシーンが強烈で印象に残っています。どのように撮影されたのですか。
城定:あそこはもう役者の力ですね。「細かい指示は出しません。感情だけで1回やってみてください」とはっきり伝えて撮影しました。ざっくりとした段取りだけを決め、本番一発勝負みたいな感じでしたね。お二人には「どう動いても捉えられるようにしますから」と伝えていました。綺麗なラブシーンを撮るつもりは一切なく、グロテスクなものになればいいなと。濡れ場は今まで何百回と撮ってきましたが、これまでにない濡れ場になった気がします。
Q:無差別殺人のシーンも多いですが、R指定(R15+)ではなくPG12になっています。
城定:最初はR15+想定で進めていました。無差別殺人は見せ場なのでちゃんと血を出したいし、あまり規制はしたくなかった。製作サイドは「PG12の方がいい」と思っているのを感じつつも、インパクトを狙っていきましょうと。「刃物が刺さっていく描写が“寄り”であるとR15+」などとよく言われるのですが、今回は直接は刺していない(凶器が見えない)。だから、もしかしたらこれはいけるかもなと。いざプロデューサーが「R15+で申請します」と言ってきた時に、「本当はPG12が良いですよね。これ、いける気もします」と伝え、急遽PG12に切り替えて申請したら、そのまま通ったんです。意外といけましたね。

『名無し』©佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ ©2026 映画「名無し」製作委員会.
Q:撮影を担当された渡邊雅紀さんとはどのようなことを話されて撮影に臨まれたのでしょうか。
城定:基本的なコンセプトや色味などは伝えますが、彼自身も色々考えるタイプなので、向こうが持ってきたものとこちらの思いをすり合わせて撮影しました。優秀なスタッフとキャストが揃っているので、彼らが得意なことをやってもらうようにしています。こちらが色々言って萎縮させるのは良くないですから。
Q:時系列が入れ替わる構成ですが、編集は脚本通りでしょうか。尺感も短めですね。
城定:編集は脚本通りです。二朗さんは専業脚本家ではないので尺読みがしづらい脚本でしたが、当初からこれは短くなるなと感じていました。そこで「これ多分80分もいかないですよ」と事前にちゃんと伝えていました。僕自身も120分くらいの長い映画は嫌いなので、短くて良いならそっちの方がありがたい。コンパクトにしようというのは最初からの狙いでした。
Q:ここ数年はかなりの数の作品を監督されていますが、スケジュールやモチベーション、そして演出など、どのようにされているのでしょうか。
城定:来たものを受けるという感じでやっているので、たまにスケジュールが破綻して迷惑をかけることもありますが…(苦笑)。モチベーションは…、もう仕事ですから。求められる以上は頑張っていきたいですし、何でも撮れる監督になれたらいいなと。
Q:最近はジャンルレスな作品のオファーが多いのではないですか。
城定:そうですね。そもそも作品自体がジャンルレスなものが多いかもしれません。ホラーなのかサスペンスなのか、はっきりしたジャンル映画よりも、「何だろう、この作品」というものが多い。企画との巡り合わせや僕自身の資質もあるかもしれませんが、あまり考えずに、流されるまま言われるまま受けて、その時点で精一杯やる。そうやってあと5年、10年やっていけるといいなという思いでやっています。
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監督/共同脚本:城定秀夫
1975年、東京都出身。武蔵野美術大学在学中から8mm映画を制作。2003年に映画『味見したい人妻たち(押入れ)』で監督デビュー後、Vシネマ、ピンク映画、劇場用映画など100タイトル以上を手がける。2020年に『アルプススタンドのはしの方』で第12回TAMA映画賞特別賞、第42回ヨコハマ映画祭、第30日本映画プロフェッショナル大賞の監督賞を受賞。その他の主な監督作品に『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』『夜、鳥たちが啼く』(22)『恋のいばら』(23)『放課後アングラーライフ』『セフレの品格(プライド)』シリーズ『嗤う蟲』『悪い夏』(25)がある。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『名無し』
全国公開中
配給:キノフィルムズ
©佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ ©2026 映画「名無し」製作委員会.