着付け × ミュージカル!
Q:日本の文化である「着付け」と「ミュージカル」の組み合わせには意外性がありました。
香月:映画を作る時にいただいたもう一つのリクエストが「継承」でした。企画を考えている時に仕事で着物を着る機会があり、着付けをしてくださったのが男性の方だったんです。男性の舞台衣装さんは割といらっしゃるのですが、訪問着の着付け師で男性の方は珍しかったので「どうして着付け師になったんだろう」と気になったんです。それをきっかけに「着付け」をテーマに深掘りしたいと思うようになりました。取材やインタビューをさせていただく中で、「継承」というキーワードにもすごく合うなと。そこに「ミュージカル」も加えて「どうにか融合させてみせるぞ!」と思いながら作っていきました。
Q:リサーチも含めて、かなり取材をされたのでしょうか。
香月:実際にインタビューをさせていただいた方は2人で、あとは着付け師の方の記事をたくさん読ませていただきました。古谷野貢さんという岡山県倉敷市を拠点に活動されている男性の着付け師さんにインタビューをさせていただいたのですが、一郎のキャラクターのほとんどが古谷野さんのことを描いていると言ってもいいくらい。古谷野さんと出会えたから、この映画を作れたのだと思います。
Q:脚本はどのくらいの期間で書かれたのでしょうか。
香月:実際にOKをいただくまでは1ヶ月くらいですね。何度かフィードバックをいただいて、修正していきました。ただ、撮影のギリギリまで調整していた部分もあったりしたので、そういう意味では最終版まで3ヶ月くらいかかったと思います。
Q:「ミュージカル」「継承」「短編」というテーマを踏まえて書くのはいかがでしたか。
香月:これまでは自分がやりたいことをやっていたので、テーマをいただいて作るのは初めてでしたが、いいなと思いました。縛りがあることで、自分の発想だけでは辿り着けなかった、思わぬ場所に行けたりする。それがすごく楽しかったです。
Q:舞台での演技と映画での演技はトーンが異なる気がしますが、どのように演出されたのでしょうか。
香月:ある映画の現場に参加した時に女性の役者さんを撮るカットがあって、彼女の演技のために、他の役者さんたちが画面の外で芝居をされていたんです。鳥肌が立つくらい素敵なシーンだったのですが、その空気感が画面にもしっかり映っていました。周りの役者さんからもらったものが彼女から溢れ出ていて、それを見た時に、「ここで起きていることは、反射してちゃんとカメラに収められるんだ」と思った。それまでは舞台が軸だったので「ライブに勝るものはない」という気持ちがどこかにあったのですが、映画には私が思っている以上にいろんな魅力があるのだと感動しました。
それをきっかけに、舞台と映画の演技は全然違うものなのだと考えるようになりました。舞台は空気を介して伝わるエネルギーに重きが置かれるのに対し、映画はそこで起きていることを被写体が反射している。そういった私の経験に基づいた話を、ガールズの皆さんにはお伝えしました。
彼女たちはミュージカルで活躍されている役者さんたちだったので、一郎とよねこさんの世界観に上手く加われるかどうか、気になっていたんです。歌って踊るとなると、どうしてもテンションが高かったり、リアクションがややデフォルメされたりするので…。けれど、ガールズの皆さんは自分なりの解釈に上手く落とし込んで撮影現場に来てくださって、一郎といても違和感がないように調整してくれました。一郎の分身としてそこにいてくれたことが、本当にありがたかったです。