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『ヌーヴェルヴァーグ』何になるか分からないまま撮る勇気、そこから全てが始まる

©JeanLouisFernandez 

『ヌーヴェルヴァーグ』何になるか分からないまま撮る勇気、そこから全てが始まる

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何者でもなかった若い映画作家たち



 1950年代後半より映画史に革命を起こしたフランスの自由な映画運動、「ヌーヴェルヴァーグ」。その記念碑的作品として知られるジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(60)は、いかにして生まれたのか。リチャード・リンクレイター監督の『ヌーヴェルヴァーグ』(25)は、そんな伝説の映画の撮影現場や背景事情を描き出す一作である。


 広く知られているように、『勝手にしやがれ』は後世のさまざまなクリエイターに強い影響を与え、それを初長編として手がけたジャン=リュック・ゴダール監督もまた、多くのシネフィルに信奉される映画人でありアーティストである。それだけに、本作『ヌーヴェルヴァーグ』は注目を浴びつつ、同時にその偉大さが表現できているかという点で、厳しい目にさらされることにもなった。


 しかし、本作がそんな特殊な条件の映画であることから、この作品自体の革新性やリンクレイター監督がここでやろうとしたことが、先入観によってうまく伝わらず、誤解を受けたり過小評価されている向きがあるように思える。筆者は、この作品の本当の面白さは、単なる偉人の再現ドラマという表面的な見た目を脱ぎ捨てた先にこそあると考える。ここでは本作の本質的な部分をできる限り深いところまで掘り起こしていきたい。



『ヌーヴェルヴァーグ』©JeanLouisFernandez 


 本作でリンクレイターは、本家にならった画面サイズ、モノクロ映像、そして全編ほぼフランス語という、アメリカの映画としては極めて異例かつストイックな姿勢で再現に挑んでいる。ゴダール役とジャン=ポール・ベルモンド役には、いずれも長編初出演となるギヨーム・マルベック、オーブリー・デュランを起用。ジーン・セバーグ役のゾーイ・ドゥイッチを除いて、キャストの多くがプロではない俳優たちで固められ、当時の現場が帯びていた熱量とフレッシュな空気を再現している。  


 本作が誤解を受けやすいのは、これがジャン=リュック・ゴダールの伝記映画として捉えられる向きがあったからだろう。もちろん、物語の中心にはゴダールがいて、『勝手にしやがれ』を撮影していく上でさまざまな背景事情が語られていくことは確かだ。しかしリンクレイターが再現しようとしているのは、ゴダールという一人の偉大な映画作家の完成された神話というよりは、むしろ、まだ何者でもなかった若い映画作家たちが、映画を撮り始めた瞬間の状況である。





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