2024.01.17
『スクール・オブ・ロック』が日本公開されてから、2024年でちょうど20年。一般的にアメリカンコメディは日本ではヒットしないと言われているが、本作は口コミで面白さが広まり、劇場からソフト、配信とメディアが広がる度に人気を高めている。先日、仕事絡みで久しぶりに観直したが、これがやはり面白い。本稿では、その魅力を改めて検証する。
主人公デューイはハードロックバンドでの成功を夢見ているギタリストだが、エゴイスティックな性格が災いしてバンドを追い出される。そんなある日、教員をしているルームメイト、ネッド宛に、私立の名門小学校から臨時講師の誘いの電話が。偶然、その電話を受けたデューイは金に困っていたこともあり、ネッドになりすまして教職を得た。とはいえ、小学生の指導などできるはずもなく、良家の子女たちも、このいい加減な教師に戸惑うばかり。
しかし、音楽の授業でクラシックを上手に奏でる生徒たちの才能に気づいたデューイは、子どもたちを新バンドのメンバーにすることを思いつく。かくして、それまで自習ばかりだったデューイの授業はロック講義へと変わり、生徒たちもロックの自由な空気に触れて、笑顔が多くなっていく。目指すは賞金の懸かったバンドバトル。そんな彼らの前に、厳格な校長や保護者たちの高い壁が立ちはだかる……。
『スクール・オブ・ロック』予告
Index
リンクレイター監督、暴れ馬の手綱を取る
デューイ役のジャック・ブラックは、当時『ハイ・フィデリティ』(00)、『愛しのローズマリー』(01)等でコメディ俳優として頭角を現わしていた。そんな彼のために、3年ほど隣に住んでいた親友であり、ネッド役で出演もしている脚本家マイク・ホワイトが書いた脚本から、本作はスタートした。ブラックは2001年に、ミュージシャン兼俳優のカイル・ガスと組み、テネイシャスDというコミカルなハードロックユニットでレコードデビューも果たしている。つまり、歌やギターはお手の物なのだ。
監督のリチャード・リンクレイターも『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』(95)などの低予算映画で好評を博し、こちらも当時は売り出し中の俊英だった。プロデューサーに彼を推薦されたブラックとホワイトは、諸手を上げて歓迎。自分のために書かれた脚本ということもあり、ブラックはとにかく暴れてやろう考え、リンクレイターは彼に自由を許しつつ、映画としての体裁を整えるために、手綱を締めるときは締めるという仕事を任された。
『スクール・オブ・ロック』(c)Photofest / Getty Images
エネルギーの塊というべきブラックの細かな動きや表情に、リンクレイターは注目。演技時の彼からカメラを離さず、そこで収めた映像を生かして、映画にはつらつとした印象をあたえている。眉毛が波打つような表情には、ブラックのコメディ俳優としての表現力がうかがえるに違いない。
大のロックファンであるブラックは、豊富な知識を脚本にも投影。セリフの中にロック話を入れ込むのはもちろん、ステージパフォーマンスにも生かしている。冒頭のライブシーンで、デューイがステージからダイブして床に叩きつけられる場面は、ブラックがロックバンド、ザ・カルトのライブに足を運んだ際に、ボーカルのイアン・アストベリーがダイブに失敗したのを目撃したことがヒントになっているとのこと。