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『スキャナー・ダークリー』を、R・リンクレイターがアニメーションで作った理由とは

A Scanner Darkly © 2006, Package Design & Supplementary Material Compilation © 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All right reserved.

『スキャナー・ダークリー』を、R・リンクレイターがアニメーションで作った理由とは

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『スキャナー・ダークリー』あらすじ

政府が腐敗した社会には物質Dという名のドラッグが蔓延。人民の生活 - 基本的人権、人間関係 - はことごとく踏みにじられていた。キアヌ・リーブス演じる覆面麻薬捜査官は、このドラッグを根絶するため、ジャンキーの役を演じネットワークの奥深くに潜入していくが、やがて捜査官として、ジャンキーとしての自分を監視する事態に陥る。そして、彼の人格は徐々に、しかし確実に崩壊していく。ロバート・ダウニーJr.、ウディ・ハレルソン、ウィノナ・ライダー、ロリー・コクレン等が演じる友人たちもまた、人間不信から狂気の色を帯びていく。人格崩壊までのカウントダウン。オレを監視しているオレがいる。



 アナタは本当にアナタだろうか?


 「アナタ」が「アナタ」であることは肉親や親戚などの血縁関係にある人によって証明されるだろう。また、友人や職場の同僚も「アナタ」を「アナタ」として認識しているはずだ。つまり、社会の中でアナタの存在は第三者と相対的に成り立っているものだ。


 では、社会の中で認識されている「アナタ」は「アナタ」自身が認識している通りの「アナタ」だろうか?


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フィリップ・K・ディックの世界



 フィリップ・K・ディックといえば、数々の傑作SF映画の原作となる小説を残したことで知られているだろう。


 『ブレードランナー』(82:原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」)。逃亡した人造人間「レプリカント」を追う「ブレードランナー」のデッカードが、捜査をしていく中で人造人間と人間を分け隔てる事へ懐疑を抱くという話だ。1作目では明確に語られなかったが、続編『ブレードランナー2049』(17)では、デッカード自身もレプリカントだったことが明らかになる。


『ブレードランナー』予告


 『トータル・リコール』(90:原作「追憶売ります」)。建設労働者が「スーパースパイとなって火星を旅する記憶」を購入しようとした瞬間に、あれよあれよと火星にまつわる陰謀に巻き込まれ、ついには火星の存亡を賭けた戦いに挑み、見事に打ち勝つ。ここで映画は終わってしまうが、本来はその戦い自体が売られた記憶ではないだろうか? という疑問符つきの物語である。


 『マイノリティ・リポート』(02:原作旧題「少数報告」)。これから起きる殺人を予見出来るシステム「プリコグ」が存在する世界で「犯罪予防局」局員として、まだ誰も殺していない殺人犯を捕まえるジョン・アンダートン。プリコグが予見した次の殺人犯は、なんとジョン・アンダートン自身。まだ誰にも殺意を抱いていないジョンは、自分の殺人を止めるために逃走する。


 ディック原作映画の有名な3作を並べただけで、見事に「自分が知らない自分」がテーマになっているのが分かるだろう。そんな映画化作品の中で、「自分が知らない自分」を観る者へもっとも直裁に突きつけてくるのが、『スキャナー・ダークリー』(06)なのである。



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