Index
- デッカードは、ロバート・ミッチャムだった。
- “フィルム・ノワール”のスター、ロバート・ミッチャム
- SF的アプローチの“フィルム・ノワール”
- ブレードランナーに継承されたドイツ表現主義
- 『ブレードランナー』を作ったアラン・ラッドの息子
デッカードは、ロバート・ミッチャムだった。
その風貌から「Sleepy-eyed Tough Guy」=「眠そうな瞳を持ったタフガイ」、と呼ばれた俳優ロバート・ミッチャム。『ブレードランナー』(82)でハリソン・フォードが演じたデッカードは、もともとロバート・ミッチャムをイメージして脚本が書かれていたという。いわゆる“当て書き”である。
ロバート・ミッチャムが25歳で映画の世界に足を踏み入れるのは、友人の俳優ウィリアム・ボイドが主演したシリーズの1本『Hoppy Serves a Writ』(43)の端役がきっかけだった。
第二次世界大戦中は衛生兵として徴兵されたが、徴兵前に撮影された『G・I・ジョウ』(45)でアカデミー助演男優賞候補(賞レースに恵まれなかったミッチャムにとって生涯唯一のノミネート)となり、ロバート・ミッチャムは新人俳優として一躍注目を浴びることになった。そして1947年に主演したのが、ジャック・ターナー監督による“フィルム・ノワール”『過去を逃れて』。ギャングのボスから行方不明となった愛人の捜索を依頼された私立探偵が、その愛人に惹かれてゆくという物語。
“フィルム・ノワール” =“Film noir”とは、フランス語を直訳すると“暗黒映画”という意味。1940年代から1950年代末のハリウッドで、主に探偵映画や犯罪映画として製作された作品群を指す。一般的には『マルタの鷹』(41)を起点とし、夜景を中心とした暗めの画調でコントラストを際立たせた映像が特徴。ミッチャムは“フィルム・ノワール”のアイコン的なスターとなるのだが、それは映画会社がある事件を利用したことで生まれたものだった。