Blade Runner: The Final Cut (c) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『ブレードランナー』はフィルム・ノワールの夢を見るか?
『ブレードランナー』あらすじ
スペクタクルなビジュアル、鮮烈なアクション、そしてその予言的な内容で、今なお絶大な支持を得ている『ブレードランナー』が、未公開シーンや特殊効果シーンを加えた監督リドリー・スコットの手による真のファイナル・カットとして甦る。ハリソン・フォードの好演により、21世紀の特殊捜査官リック・デッカードのキャラクター造形 -強靱さと脆さという相反する面を併せ持つ- は確立され、命を吹き込まれた。テクノロジーの進化にもかかわらず、随所に廃退の匂う近未来を舞台に、デッカードは逃亡した凶悪なレプリカントを追う。-やがて、神秘的な女性との出会いが彼の運命を大きく変えていくとも知らずに。
Index
- デッカードは、ロバート・ミッチャムだった。
- “フィルム・ノワール”のスター、ロバート・ミッチャム
- SF的アプローチの“フィルム・ノワール”
- ブレードランナーに継承されたドイツ表現主義
- 『ブレードランナー』を作ったアラン・ラッドの息子
デッカードは、ロバート・ミッチャムだった。
その風貌から「Sleepy-eyed Tough Guy」=「眠そうな瞳を持ったタフガイ」、と呼ばれた俳優ロバート・ミッチャム。『ブレードランナー』(82)でハリソン・フォードが演じたデッカードは、もともとロバート・ミッチャムをイメージして脚本が書かれていたという。いわゆる“当て書き”である。
ロバート・ミッチャムが25歳で映画の世界に足を踏み入れるのは、友人の俳優ウィリアム・ボイドが主演したシリーズの1本『Hoppy Serves a Writ』(43)の端役がきっかけだった。
第二次世界大戦中は衛生兵として徴兵されたが、徴兵前に撮影された『G・I・ジョウ』(45)でアカデミー助演男優賞候補(賞レースに恵まれなかったミッチャムにとって生涯唯一のノミネート)となり、ロバート・ミッチャムは新人俳優として一躍注目を浴びることになった。そして1947年に主演したのが、ジャック・ターナー監督による“フィルム・ノワール”『過去を逃れて』。ギャングのボスから行方不明となった愛人の捜索を依頼された私立探偵が、その愛人に惹かれてゆくという物語。
『ブレードランナー』Blade Runner: The Final Cut (c) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
“フィルム・ノワール” =“Film noir”とは、フランス語を直訳すると“暗黒映画”という意味。1940年代から1950年代末のハリウッドで、主に探偵映画や犯罪映画として製作された作品群を指す。一般的には『マルタの鷹』(41)を起点とし、夜景を中心とした暗めの画調でコントラストを際立たせた映像が特徴。ミッチャムは“フィルム・ノワール”のアイコン的なスターとなるのだが、それは映画会社がある事件を利用したことで生まれたものだった。