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『スキャナー・ダークリー』を、R・リンクレイターがアニメーションで作った理由とは

『スキャナー・ダークリー』を、R・リンクレイターがアニメーションで作った理由とは

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ロト・スコープの意味



 『スキャナー・ダークリー』はアニメーション映画ではあるが、いわゆる「アニメーション」とは違った手順で作られている。


 本作は『6才のボクが、大人になるまで。』(14)などのリチャード・リンクレイターが監督を務め、キアヌ・リーブスやロバート・ダウニーJr、ウィノナ・ライダーなどの俳優を起用し、通常の実写撮影が行われている。そうしてまずは、実写映画をおおよそ一本作ってしまう。その完成した映画をベースの素材として、その上に彩色をしていき、それをさらにアニメーションとして動画に落とし込んでいく。


 これは「ロトスコープ」と呼ばれる技法である。ロトスコープが使用された過去の作品ではアニメーション映画の名匠ラルフ・バクシ監督による『ロード・オブ・ザ・リング 指輪物語』(78)や湯浅政明監督の『マインド・ゲーム』(04)が有名だろう。この技法の特徴はアニメーションに「リアリティ」が加えられるところだ。




 例えば「歩く」という単純動作の場合。通常のアニメーションなら左右の足を交互に動かす一連の動作を繰り返せば「歩く」様子は表現される。しかし、その見た目は単純で記号的だ。実際に私たちが歩く場合、歩幅は必ず微妙に違うし、足を下ろした時につま先の向く方向もその都度若干違う。実際の人物が歩く様子をトレースし、ロトスコープによるアニメーション化をすることで記号的になりがちな「歩く」に、リアリティが加えられるのだ。


 『スキャナー・ダークリー』では薬で狂った精神が見せる、虫に変化する人間や身体中を這う昆虫“アリマキ”などを、アニメーションが得意な非現実的表現で描きつつ、同じトーンで人間を生々しくリアルに描き、劇中の「虚構」と「現実」をシームレスに一つの画面に収めている。


 つまり『スキャナー・ダークリー』が観せるのは、ドラッグにより精神が混沌とし「虚構」と「現実」が混濁した中毒者が見る世界そのものなのである。


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