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『スクール・オブ・ロック』成績表なんてクソ食らえ! 今なお響く痛快作

(c)Photofest / Getty Images

『スクール・オブ・ロック』成績表なんてクソ食らえ! 今なお響く痛快作

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ロックに目覚めた、個性が光る子役たち



 生き生きとしているのはブラックだけではなく、デューイの教え子を演じた子役たちも同様だ。名門学校の成績至上主義的な方針に慣れていた生徒たちの表情が、デューイとの交流によってほぐれていく過程は、本作の温かい見どころ。デューイはダメ教師ではあるが、唯一の良いところは、生徒たちの個性に応じて、楽器担当以外にもマネージャーや照明係や衣装係などの役割をあたえたこと。個性を“抑圧”されるのではなく“肯定”されることで、子どもたちの表情は輝いていくのだ。


 生徒を演じた子役たちは約500人のオーディションを経て選出された。とりわけ重視されたのは、バンドでギター、キーボード、ドラムをプレイする子どもで、実際に演奏できる子役をキャスティング。ちなみにキーボードプレーヤーのロバート・ツァイは劇中の役柄そのままにクラシックピアノの経験しかなかったが、音楽コンサルタントを務めたアーティスト、ジム・オルークの指導により、ロック風のフレーズを吸収していったとのこと。


 子役たちは大人になってからもミュージシャンや俳優として活動を続けている。中でも、優等生のサマーを演じたミランダ・コスグローヴはこの後、2007年より放映されたTVシリーズ「iCarly」で主演を務めて人気者となり、同時にシンガーとしても活動を開始。映画『怪盗グルー』シリーズでは声優として好評を博した。一方、残念な話になるが、少々反抗的なドラマーの少年フレディを演じて強い印象を残したケヴィン・クラークは2021年に交通事故により、32歳の若さで世を去っている。



『スクール・オブ・ロック』(c)Photofest / Getty Images


伝説のあのバンドに、楽曲の使用許可を求める



 本作のもうひとつの主役と言えるのが音楽、つまりロックだ。本作には数多くのロックの名曲が散りばめられている。授業で生徒たちに演奏やロック史を教える場面では、ラモーンズの“マイ・ブレイン・イズ・ハンギング・アップサイドダウン”、デューイが女性校長を説得しようとしてバーに連れ出した際には、彼女の好きな曲というスティーヴィー・ニックス“エッジ・オブ・セブンティーン”をフィーチャー。


 バンドバトルへの出場を決めたデューイと子どもたちの高揚の場面では、レッド・ツェッペリン“移民の歌”が流れるが、この曲の起用にはちょっとした逸話がある。当時、彼らの楽曲は使用許可を取るのが難しいことで知られていた。しかし、どうしてもこの曲を映画に使いたい。そこでジャック・ブラックはバンドバトルの撮影後、オーディエンス役のエキストラたちとともに曲の使用を懇願。これをビデオレターにしてツェッペリンのメンバーに送り、許可を取り付けたという。このアツいビデオレターはYouTubeにもアップされているので、気になる方は見てみて欲しい。



 もっとも注目すべき楽曲は、バンドバトルでブラックと子どもたちがプレイするオリジナル曲“スクール・オブ・ロック”だろう。楽屋の場面でチラリと出演しているロックバンド、ザ・ムーニー・スズキのサミー・ジェイムズJr.が曲を作り、マイク・ホワイトが詞を書いたこのナンバーは、ブラックと子役たちによって実際に演奏されている。ザ・フーの“無法の世界”を連想させるスケールの大きなハードロック・ナンバーで、暴れまわるブラックもさることながら、ソロも務める子どもたちのはつらつとした雰囲気も魅力。このパフォーマンスはカタルシスを感じさせる名場面だ。



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