ホラーとアクション、その理想形
Q:『レディ・オア・ノット』から『スクリーム』シリーズ、『アビゲイル』、そして本作へと進むにつれ、お二人の作品はホラーだけでなく、アクション映画としての完成度も高まっています。今回はホラーとアクションのバランスを、どのように設計しましたか。
ジレット:僕たちが子どもの頃から大好きだったのは、『エイリアン』(79)や『ターミネーター』(84)のようなアクションホラーでした。今でもあの作品群は、我々の大きな指針になっています。これらの映画に共通しているのは、リプリー(『エイリアン』)やサラ・コナー(『ターミネーター』)のようなヒロインが、自分ではどうにもできない状況に放り込まれることです。僕たちも、そういう境遇にあらがう主人公を描きたいと思っていました。
普通の人間が、生き延びるために必死にもがく。その姿があるからこそ、ホラーとアクションは自然に共存できるんです。ときには滑稽な行動を取ることもありますが、その結果には必ず現実的な代償がともなう。だから緊張感が生まれるんだと感じます。
なにより僕たちが大切にしているのは、登場人物にとって危険が“本物”であることです。そこにどれだけ派手なアクションやユーモアがあっても、「この人は本当に生き残れるのだろうか?」と観客に思わせ続けること。それが、こうしたジャンルの面白さだと考えています。

『レディ・オア・ノット2』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
Q:前作は一軒の屋敷という閉鎖空間が舞台でしたが、今回は世界規模の組織や複数の一族へと大きく広がっています。そうしてシリーズを発展させるうえで、「これは守っておきたい」という核は何だったのでしょうか。
ベティネッリ=オルピン:まず考えたのは、前作の単なる繰り返しにはしたくないということでした。同じ閉鎖空間をもう一度描くのではなく、新しいやり方で『レディ・オア・ノット』らしさを表現したかったんです。
そのために今回は、異なる思想や背景を持つ一族を数多く登場させました。それぞれ異なる武器や戦い方でグレースを追い詰め、彼女が乗り越えるべき障害を、より複雑で多層的なものにしたかったんです。ロケーションも前作とは大きく変えました。屋敷だけではなく、屋外や昼間のシーンも積極的に取り入れています。
それでも絶対に失いたくなかったのは、主人公が「逃げ場を失っている」という感覚でした。世界がどれほど壮大になっても、その閉塞感だけは、このシリーズの核として守り続けたいと思っていました。
ブラックユーモアと恐怖は紙一重
Q:二人の作品は、強烈なバイオレンスを描きながらも、観ている者は思わず笑ってしまう場面も少なくありません。暴力を“恐怖”だけで終わらせず、“笑い”へ転換するうえで、最も大切にしていることは何でしょうか。
ジレット:まず大切なのは、バイオレンスにカタルシスがあることです。『レディ・オア・ノット』における暴力は、主人公が勝利へ近づく瞬間でもあります。なので、単なる残虐描写にはしたくありません。
もう一つは、このシリーズならではのルールです。悪魔との契約という、どこか馬鹿馬鹿しくもあるルールが存在していて、それを破れば必ず報いを受ける。その発想自体にブラックユーモアがあります。僕たちは、その「ルールが破られた結果」をどう見せれば、いちばん面白くなるのかを考えるのが好きなんです。
もちろん、暴力は恐ろしいものです。でもその恐ろしさの中には、どこか滑稽さもある。その両方が共存しているところに、『レディ・オア・ノット』らしさがあると思っています。