ホラー映画を更新し続けるために
Q:『スクリーム』『スクリーム6』そして『アビゲイル』と、二人の作品には80〜90年代ホラーへの愛情が色濃く感じられます。クラシックホラーを現代へアップデートするうえで、特に意識していることはありますか。
ベティネッリ=オルピン:なによりも大事なのはキャストですね。映画は最終的に、配役によって成功するか失敗するかが決まると思っています。観客が何度も観返したくなる作品になるかどうかも、結局はそこなんです。もちろん、80年代や90年代のホラー映画は大好きです。でも僕たちが目指しているのは、決してノスタルジーではありません。あの頃の映画が僕たちに与えてくれた驚きや興奮を、今の観客にも体験してほしい。でも、そのためには昔を再現するのではなく、新しい驚きを用意しなければならないと思っています。
それに僕たちは、映画を一つのジャンルへ押し込めたくありません。ドラマがあり、コメディがあり、ホラーがあり、アクションがある。それらが自然に共存する映画を目指しています。そして、それを成立させるのが、魅力的なキャストなんです。
Q:今後もフランチャイズ作品とオリジナル作品、その両方に取り組んでいく考えですか。
ジレット:もちろんです。『スクリーム』のように既存作品の世界へ飛び込むのも刺激的ですし、自分たちだけのルールを一から作るオリジナル作品には、それとは違う自由があります。『レディ・オア・ノット2』も、自分たちが生み出した世界へ戻る作品だったからこそ「ここまで踏み込んでいいんだ」と思える自由がありました。
いま僕たちは『ハムナプトラ』シリーズ最新作の準備を進めていますが、シリーズをなぞるだけの作品にはしたくありません。初めてオリジナル映画を観たときのような驚きや興奮を味わってもらうには、リスクを恐れず、新しいアイデアへ挑戦し続ける必要があります。これからもオリジナル作品を作り続けたいですし、本当に魅力を感じられるシリーズであれば、そこへ新しい発想を持ち込むこともためらいません。

『レディ・オア・ノット2』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
Q:そういえば『レディ・オア・ノット2』では「世界を支配する力」を巡る争奪戦が描かれています。しかもその力を象徴するアイテムが“指輪”ということで、自分はそこから『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(01~03)を連想しました。同シリーズのフロド役で知られるイライジャ・ウッドの起用も、そのことを狙ってのキャスティングだったのでしょうか。
ベティネッリ=オルピン:そう受けとられるのも無理はないんですが(笑)、以前からイライジャとは「いつか一緒に仕事をしよう」と話していたんです。脚本を書いていた段階では、この役は名前も背景もない弁護士だったんですが、読み返したときに「これはイライジャしかいない」と思ったんです。そこで彼に「興味があれば読んでみない?」と脚本を送りました。
ジレット:もちろん『ロード・オブ・ザ・リング』を連想する人がいることは分かっていますし、僕たちも「そういう見方もあるよね」とは思いました(笑)。でも、それを狙ってキャスティングしたわけではありません。彼を選んだ理由は、その役にぴったりだったからです。作品全体のトーンを左右する難しい役でしたが、イライジャはその絶妙なバランスを、本当に見事に演じてくれました。
『バトル・ロワイアル』からの影響
Q:日本には『バトル・ロワイアル』(00)という、極限状況で人間性を描いたバイオレンス・サバイバルの傑作があり、『レディ・オア・ノット』シリーズにもそれに近い精神性を感じました。日本映画はお二人にとってどのように映り、そして影響を及ぼしているのでしょうか。
ジレット:核心を突く指摘ですね。最初の『レディ・オア・ノット』を作っていた頃、『バトル・ロワイアル』について何度も話し合いました。僕たちがこの作品で特に好きなのは、暴力があまりにも突然に、一瞬で起こることです。その衝撃はとてもリアルなのに、同時にどこか過激で、不条理で、映画的でもある。爆発や人体破壊の描写を考えるときにも、何度も観返した作品の一つでした。
ベティネッリ=オルピン:影響という点では、黒澤明の存在が大きいですね。黒澤作品には、人間ドラマ、ユーモア、壮大な神話性、そしてアクションが見事なバランスで共存しています。僕たちが目指しているのも、ただのホラーやアクションではありません。登場人物がいて、笑いがあって、大きな世界観があり、そのすべてが一つの作品として融合している。そういう映画作りは、間違いなく日本映画から学んだものだと思っています。
『レディ・オア・ノット2』を今すぐ予約する↓
監督:マット・ベティネッリ=オルピン&タイラー・ジレット
マット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ジレットの監督デュオで、幅広い観客層に支持される不穏な映画作家としての地位を確立している。2012年『V/H/S』(13)のエピソード監督で注目を集め、サーチライト配給のホラー映画『レディ・オア・ノット』の世界的ヒットで飛躍を遂げた。本作はカルト的な人気を博し、全世界で5800 万ドル(約93億円)の興行収入を記録。その後『スクリーム』シリーズのリブート作品 (22未)と『スクリーム6』(23未)を監督し、ディメンション/スパイグラス製作のホラーシリーズとして全世界で3億400万ドル(約384億円)を売り上げた。2024年にはホラー・ヴァンパイア・コメディ『アビゲイル』を公開。
取材・文:尾崎一男(おざき・かずお)※『ざき』は立つさきです。
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。
Twitter:@dolly_ozaki
『レディ・オア・ノット2』
8月14日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.