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『左利きの少女』ツォウ・シーチン監督 ショーン・ベイカーと培った創作術、故郷・台湾で開花【Director’s Interview Vol.581】

©2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

『左利きの少女』ツォウ・シーチン監督 ショーン・ベイカーと培った創作術、故郷・台湾で開花【Director’s Interview Vol.581】

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台湾で女性として育つことの困難を描きたい



Q:台湾で刊行された本作のメイキング本のなかで、あなたは、この映画を通して男性中心社会や家父長制を批判する狙いがあったことをはっきりと言葉にしています。こうした主題は最初からあったのか、それとも長い開発期間を通じて固まったのでしょうか。


ツォウ:私はショーンに対し、はじめから「台湾で女性として育つことの困難を描きたい」と話していました。ほかの人たちにこの話をしたときも、多くの方から「その現実は確かにあるけれど、私たちがその話をすることはない」と言われたのをよく覚えています。


台湾に暮らす女性の友人たちからは、同じ現実が今でも繰り返されていると聞きます。そうした困難は「伝統」として見なされ、「伝統だから仕方がない、話し合う機会はないものだ」と思われている。けれど、私は「伝統には従うべき」という考え方が正しいとは思いません。良い伝統は守ってゆくべきですが、人を傷つける伝統を「伝統」とは呼べないし、従うべきではないのです。


現在の社会や状況にまるで合わない伝統は、変えていかなければなりません。「もう古い話だよ」と言われていることでさえ、完全になくなったわけではない。むしろ、それらは人々の習慣に埋め込まれていて、変えることがより難しくなっているのです。



『左利きの少女』©2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.


Q:この映画が完成するまでの約25年間で、あなた自身も母親になりました。この変化は、作品や登場人物にどんな影響を与えたと思いますか。


ツォウ:娘が生まれて、母親になったあと、この映画は私にとってより重要なものとなりました。この物語には母親と2人の娘が登場するので、「3人のうち、あなたはどの人物ですか?」とよく聞かれます。しかし私は、3人全員が自分だと思うのです。


母親として、娘には自分のためになることをしてほしい。けれども同時に、娘をひとりの人間として尊重しなければならない、そのバランスを深く考えるようになりました。昔、母親は幼い私にどう接していたのか。今、母親である私は娘にどう接するのか。古くからの伝統を娘にも押しつけるのか。そういうことを考えてきたことが、私をよりよい母親にしてくれたと思います。


また、幼い少女も私自身です。かつて左利きだった私は、利き手を右手に矯正されたとき、何が起きているのか理解できず、あの少女と同じ気持ちになっていたと思います。少女にとって、この世界はすべてが新鮮です。そこに突然、伝統が押しつけられたとき、私は何を感じ、言われたことをどのように理解していたのか……。


そして、若い姉も私なのです。あの年頃の私はとても反抗的で、教えられることにことごとく反発し、疑問を抱いていました。伝統を打ち破りたい、規則から抜け出したいと感じていたのです。


この映画とともに歩み続けてきたなか、今でもこの作品を通していろいろなことを考えます。「こうした伝統を、私はどのように変えていきたいのだろうか?」と。私には、大きな社会全体を変えることはできないかもしれない。けれど、自分の人生の中で変化を生み出すことはできるかもしれないし、観客に影響を与えることもできるかもしれません。


映画を観てくださった方々から、実際に「人生に大きな影響を与えてくれた作品だ」とか、「自分の声を聞いてもらえたように思えた」という声をたくさん聞きました。それは私にとって、この映画がどんな賞を獲ることよりも意味のあることです。ほんの小さな変化であれ、それは種をまくこと。変化はすぐさま目に見えないとしても、近い将来、私たちの前で起こるかもしれません。



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© Ori Media

監督/共同脚本:ツォウ・シーチン

台湾・台北出身。輔仁大学卒業後に渡米、ニューヨークのThe New School(メディア研究修士)において映画編集を学ぶ過程でショーン・ベイカーと出会う。彼との共同監督作『テイクアウト』(04)を発表。以降は『タンジェリン』(15)、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)、『レッド・ロケット』(21)など、ベイカーの監督作をプロデューサーとして支える。『左利きの少女』がツォウ・シーチンの単独監督デビュー作品である。現在、ニューヨークを拠点に映画作りを行っている。



取材・文:稲垣貴俊

ライター/編集者。主に海外作品を中心に、映画評論・コラム・インタビューなどを幅広く執筆するほか、ウェブメディアの編集者としても活動。映画パンフレット・雑誌・書籍・ウェブ媒体などに寄稿多数。国内舞台作品のリサーチやコンサルティングも務める。




『左利きの少女』

全国公開中

配給:スターキャットアルバトロス・フィルム  

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