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『顔 -かお-』ヨン・サンホ監督 映画の美学は欠乏から生まれる【Director’s Interview Vol.584】

『顔 -かお-』ヨン・サンホ監督 映画の美学は欠乏から生まれる【Director’s Interview Vol.584】

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映画の美学は欠乏から生まれる



Q:これまで手がけられた大作とは変わり、かなりミニマムな体制での制作だったようですが、大作映画制作での経験が生かされた点は何かありましたか。


ヨン:大いにありました。今回参加したスタッフや俳優たちは、私の実写映画で何度も組んできた仲間です。彼らのシナリオ解釈が作品に明確な影響を与えました。私が描いた原作のグラフィックノベルもありますが、映画版の方がはるかに本質に迫り、ミステリーとしての完成度も高まったと感じています。漫画が私個人の過去の産物だとすれば、映画『顔 -かお-』は、これまでのジャンル映画制作で出会った人々とともに作り上げた作品です。そのため、より大衆性を持ったミステリー映画として完成させることが出来ました。漫画の単なる実写化ではなく、より発展的な形へと昇華できたと思っています。



『顔 -かお-』ⓒ 2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


Q:漫画はひとりで自由に描けるがゆえ自分の考えをより直接的に反映させられると思うのですが、映画はより多くの人が関わるため自身の考えがブレるのではないかと想像します。実際はどうなのでしょうか。


ヨン:今回は低予算の映画でしたが、「映画の美学はプロダクションの欠乏から生まれることもある」と気づかされました。制約があるからこそ多くのアイデアが生まれ、俳優たちの集中力も高まります。多くのクリエイターは「自分の思い通りに全てを展開できれば、最高の芸術が生まれる」と考えがちですが、私は少し違います。映画であれアニメであれ、自分の思い描いたものが100%そのまま具現化されるわけではありません。しかし、その「芸術の意外性」や、自分一人の想像を超えるものが生まれる過程こそが、面白い作品を生み出す原動力になります。私が脚本を書き、他の監督に演出を委ねるのを楽しむのも同じ理由です。自分の想像と全く違う素晴らしいものが出来上がる瞬間は、とても興味深いですし、純粋に楽しいですね。


Q:そういった意味では、Netflixシリーズの「ガス人間」はいかがでしたか。


ヨン:非常に面白かったです。私が脚本を書きましたが、片山慎三監督の個性が存分に発揮された作品になりました。制作段階で、片山監督が撮影して編集した映像を見るたびに、自分の作品というより他人の作品を見ているような新鮮な感覚で楽しめました。それこそが芸術の意外性であり、素晴らしい化学反応です。脚本家という立場を忘れて、一人のファンとして楽しませてもらいました。




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監督/脚本:ヨン・サンホ

ゾンビや寄生生物、呪い、超能力、SF、コズミック・ホラーなど、興味深く制限のない題材とジャンルを横断し、商業的成功を収めてきたヨン・サンホ。『豚の王』(2011)『我は神なり』(2013)に代表される、韓国社会の暗部を鋭くえぐる初期作品の世界観を想起させる本作で、彼は原点へと回帰する。2018年に自ら執筆・作画した初のグラフィックノベル「顔」は、当時から実写化を熱望していた企画であり、「これほど素晴らしい形で劇場公開されることが本当にうれしい。自分の作品の中でも最も大切に思っている」と語る渾身の作だ。母の顔を知らない息子が、40年の時を経て白骨死体となって見つかった母の死の真相を追うミステリーを軸に、視覚障害を持つ篆刻職人と一人の女性の人生を通して、美と醜に対する人々の先入観を揺さぶり、観る者に強烈な問いを突きつける。


FILMOGRAPHY

『啓示』(2025/監督・脚本)、「地獄が呼んでいる」シーズン2(2024/演出・脚本)、「寄生獣 ―ザ・グレイ―」(2024/演出・脚本)、「ソンサン ―弔いの丘―」(2024/原案・脚本)、『JUNG_E/ジョンイ』(2023/原案・監督・脚本)、『プリンセス・アヤ』(2022/プロデューサー)、「怪異」(2022/脚本)「地獄が呼んでいる」(2021/演出・脚本)、『呪呪呪/死者をあやつるもの』(2021/原案・脚本)、「謗法~運命を変える方法~」(2020/脚本)、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020/監督・脚本)、『サイコキネシス-念力-』(2018/監督・脚本)、『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016/プロデューサー・監督・脚本)、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016/監督・脚本)、『発狂する現代史』(2014/プロデューサー)、『我は神なり』(2013/監督・脚本)、『豚の王』(2011/監督・脚本)ほか



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成





『顔 -かお-』

8月28日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

配給:ツイン 

ⓒ 2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.

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