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『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』塚本晋也監督 「なぜ人を殺したのか?」問いが意味するもの【Director’s Interview Vol.587】

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』塚本晋也監督 「なぜ人を殺したのか?」問いが意味するもの【Director’s Interview Vol.587】

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「なぜ人を殺したのか?」という問いが意味するもの



Q:ベトナム戦争の状況をリアルに描いた作品は一時に比べると最近では少なくなったように感じます。この映画でそれを実現する思いは、海外スタッフやキャストにどのように受け止められましたか。


塚本:関わってくれたスタッフやキャストは、とても前向きに参加してくれました。テーマに関して疑問をぶつけてくる人は誰もいませんでしたね。それは「賛同してくれた」と理解しても良いのかなと思っています。


特に、ジェフリー・ラッシュさんがこの映画に関わってくれたことは、私にとって非常に重要でした。映画の中ではアメリカ人が加害を犯しているわけで、それを日本の監督が描くことに対して、どう思うのかという視点もあるはずです。もしアメリカで活動する俳優やプロデューサーが一切関わっていない中で描いていたら、どう受け取られたかわかりません。その中で、主にアメリカで活躍しているジェフリーさんが情熱的に関わってくれたことは、非常に意義のあることだと思っています。


Q:ジェフリーさんにお会いして、最初にどういうお話をされましたか。


塚本:映画を通して何を描きたいかというよりも、「ダニエルズはどういう人なのか」という点について具体的に話し合いました。ダニエルズのことは原作にも詳しくは書かれていないので、私も最初は彼がどういう人物なのかわからなかったんです。しかし、ベトナム戦争を専門とする精神カウンセラーの先生にインタビューした際、「ダニエルズさんを知っているよ。彼の資料がある」と、かなり細かいプロフィールが書かれた資料をいただきました。それが非常に参考になり、その内容をジェフリーさんに細かく伝えていきました。



『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA


Q:医師のダニエルズが、「なぜ人を殺したのか」とアレンに何度も問う場面が強烈です。個人的には「戦争という常識は存在しない」と強く問われているようにも感じました。あのセリフへの思いがあれば教えてください。


塚本:今の「戦争という常識は存在しない」という解釈は、すごく面白いですね(笑)。あのシーンを描くのは、実は私自身も難しかったんです。原作の他にもう1冊本(「戦場で心が壊れて: 元海兵隊員の証言」新日本出版社)があり、そこにはダニエルズのことが書かれていました。彼はアレンに対して色々と意見するのではなく、最初はただひたすら話を聞く係だったそうです。アレンが正直に話せることでだんだんとPTSDが和らいでいき、彼にとってダニエルズは気を許す存在になっていった。それなのに、カウンセリングの終わりになると必ず「なぜベトナムで人を殺したの?」と聞いてくる。アレンが「戦争だから仕方なく殺したんだ」と返すと、それ以上は追及せずに「うん、わかった」と終わる。それが何年も続いたらしいのです。そしてある日突然、最初からその質問をする日があったと。そこは映画の大事なポイントになりました。


「ただひたすら聞く」というのは理解できました。しかし、最後に必ずあの質問をする理由は、原作を読んだ時も映画を作っている時も、私もはっきりわかっていたわけではありません。当時はダニエルズ自身も、PTSDをどう解決すべきか、明確な解決策を持っていたわけではなかったのだと思います。治療のフォーマットに則ってやったのではなく、人間と人間のぶつかり合いの中で、どうすればアレンを良い方向へ導けるのかをその時々で考えていたのでしょう。基本的には「ただ聞く」ことが一番良くて、アレンの心の中にある本当の事実を語ることがPTSDを減らす。建前ではなく心に迫ったということだと思います。ただ、アレンが最後に発する答えを映画で本当に言わせていいのか、最初は迷いましたし、厳しいとも思いました。それでも原作に書かれているし、非常に重要な部分だと感じたので、あのシーンがあることを逆算しながら映画を作っていきました。


そのシーンに関しては、映画を観た皆さんの解釈が違うのがすごく面白くて。今お話しいただいた「戦争という常識は存在しない」という解釈もすごく参考になるし、それについてもっと考えてみたいですね。あのシーンはそういう投げかけでもあり、答えでもあったのかなと。そういう意味でも、映画というものをまた面白く感じています。





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