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『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』塚本晋也監督 「なぜ人を殺したのか?」問いが意味するもの【Director’s Interview Vol.587】

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』塚本晋也監督 「なぜ人を殺したのか?」問いが意味するもの【Director’s Interview Vol.587】

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短い撮影時間から得たもの



Q:今回は製作・プロデュースは担当せず、3カメでの撮影、モノローグの使用、回想形式の採用など、本作実現のためにこれまでの優先順位から変えたものは大きかったかと思いますが、それは映画作りにどのように作用しましたか。


塚本:いつも同じ方法と決まっているわけではなく、1作ごとに脚本の段階からゼロベースで考えています。「この素材ならいつものフォーマットで」ということではなく、毎回初心に返って取り組むんです。今回は巨大な規模の映画を撮るという身構えがあったわけではなく、アレンさんの原作をちゃんと描くにはどうしたらいいかを真面目に考えました。「日本だけで撮影を済ませられないか」など色々検討しましたが、それだと原作を正しく描くことにならない。自分が一番恐ろしく感じて、且つ感銘を受けた部分は、ベトナムでの現地体験と、帰国してからのPTSDの体験です。これを観客の皆さんに生々しく体験してもらうため、必要なことを自分で選択していった結果、それを元にプロデューサー陣が緻密に組み上げてくださったという感じです。


私自身は監督、脚本、メインカメラ、編集と、やっていることはいつもと変わりません。ただ、それを支える規模が膨大だったので、これまで全て1人で背負っていた部分を周りに助けてもらい、少し楽をさせてもらった感覚はあります。それでもギックリ腰にはなりましたが(笑)。ビジュアル面を揃えるのは大変でしたが、一番厳しかったのは撮影時間の拘束でした。限られた短い時間でどう撮るかと考えた結果、3カメで一気に撮り上げる方法に行き着きました。全て必要に駆られ、最小限の手数で成立させたという形です。



『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA


Q:撮影時間の拘束が厳しかったというのは、海外の組合の問題でしょうか。


塚本:その通りです。ホテルを出てから帰るまでで8時間というのはかなり短い。撮影時間だけで8時間ならまだしも、移動も含めての時間ですから。でもその短い時間がネガティブに働いたかというと、そうではなく、みんなの集中力がすごく増しました。前日から「どう撮り上げるか」をしっかり考える時間ができましたし、ホテルに帰ってからご飯を食べて寝る時間もしっかりと確保できた。じっくりコンテを考え、打ち合わせをする時間をしっかりとって、一気に撮影に臨むというスタイルは、結果的に悪くなかった気がします。


Q:英語圏での撮影という点では、スコセッシの『沈黙 -サイレンス-』(16)への出演経験が生かされたものはありましたか。


塚本:『沈黙 -サイレンス-』に参加する時は、どれだけ違うすごい世界が見られるのだろうと期待して行ったのですが、中心となっているクルーやキャストがやっていることは、私の自主映画の現場と全く変わりませんでした。天候に対する焦りなども同じで、「どこの現場も基本的には同じなんだな」と何だか嬉しかったですね。その感覚があったので、今回も特別身構えることなく、自然な流れで必要なことをやっていけました。


Q:塚本監督は、数多くの他の監督の作品に出演されていますが、その現場で学ぶものや、着目していることなどはありますか。


塚本:「映画を作っている」という行為は同じでも、監督ごとにやり方が全く違って自由だということですね。私は自主映画で好きにやっているように見えて、実は気が小さくて、いつも気を遣ってドキドキしながら作っているんです(笑)。でも他の現場へ行くと、「よくそんなことするね」と思うようなことを監督が平気でやっていて。例えば、人待ちや車待ちの時など、自分の映画だったらソワソワしてしまうような場面でも、堂々と気にせず撮影していたりする。そういう皆さんの「自由性」に触れて、「あ、こんなふうにやってもいいんだ」と励まされることが結構大きいかもしれません。





監督/脚本/撮影/編集:塚本晋也

1960年1月1日、東京・渋谷生まれ。14歳で初めて8ミリカメラを手にする。87年『電柱小僧の冒険』でPFF グランプリ受賞。89年『鉄男』で劇場映画デビューと同時に、ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。以降、国際映画祭の常連となり、その作品は世界の各地で配給される。世界三大映画祭のヴェネチア国際映画祭との縁が深く、『六月の蛇』(02)はコントロコレンテ部門(のちのオリゾンティ部門)で審査員特別大賞、『KOTOKO』(11)はオリゾンティ部門で最高賞のオリゾンティ賞を受賞。『鉄男 THE BULLET MAN』(09)、『野火』(14)、『斬、』(18)でコンペティション部門出品。『ほかげ』(23)はオリゾンティ・コンペティション部門へ出品された。また、北野武監督作『HANA-BI』がグランプリを受賞した97年にメインコンペティション部門、05年はオリゾンティ部門、19年にはメインコンペティション部門と3度にわたって審査員を務めている。製作、監督、脚本、撮影、照明、美術、編集などすべてに関与して作りあげる作品は国内、海外で数多くの賞を受賞、長年に渡り自主制作でオリジナリティ溢れる作品を発表し続ける功績を認められ、2019年にはドイツで開催される世界最大の日本映画祭「第19回ニッポン・コネクション」にてニッポン名誉賞、ニューヨークで開催される北米最大の日本映画祭「第13回Japan Cuts~ジャパン・カッツ!」にて、第8回 CUT AVOVE(カット・アバブ)賞を受賞した。俳優としても監督作のほとんどに出演するほか、他監督の作品にも多く出演。2002年には『とらばいゆ』(01/大谷健太郎監督)、『クロエ』(01/利重剛監督)、『溺れる人』(00/一尾直樹監督)、『殺し屋1』(01/三池崇史監督)で毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。同コンクールでは15年に『野火』で監督賞・男優主演賞をW受賞、19年に『斬、』で男優助演賞を受賞している。その他出演作に『沈黙ーサイレンスー』(16/マーティン・スコセッシ監督)、『シン・仮面ライダー』(23/庵野秀明監督)、『宝島』(25/大友啓史)、『時には懺悔を』(26/中島哲也監督)。NHK 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)などドラマにも多数出演。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:井上佐由紀




『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

9月11日(金)kino cinema 新宿ほか公開

配給:キノフィルムズ

©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA

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