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設定と現実のあいだを生きるおもちゃたちー『スモール・ソルジャーズ』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.75】

設定と現実のあいだを生きるおもちゃたちー『スモール・ソルジャーズ』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.75】

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造形のおもしろさと善悪の反転





 チップをはじめとするコマンドー・エリートたちは、ハズブロ社の「G.I.ジョー」シリーズが代表するような兵士フィギュアに、90年代にやたらと多かったトーキング機能が加わったような具合で、いわゆる「アメトイ」の典型を戯画化したような格好である。そんな無骨な彼らに対して「醜い敵キャラ」として設定されたのが有機的なクリーチャーたちで構成されたゴーゴナイトだ。本来はアーウィンがデザインした、幼児向け言語学習プログラムのキャラクターであるため、友好的で対話による解決を重んじ、さらには学習能力が高い。コマンドーたちの方にゴーゴナイトを敵視し殲滅する、という目的が付与されているばかりで、ゴーゴナイトの方に悪役としての設定が全く施されていないので(冒頭の形ばかりの企画会議から連なる適当さゆえなのだが、このおかげでゴーゴナイトは本来の性格のままとなる)、敵対心は完全に一方通行。全く別々の企画をその場で無理やりひとつにしたので、整合性などあるはずもない。


 ゴーゴナイトの面々は形や体型、モチーフもバラバラなのだが、個性豊かな造形は楽しく、クリーチャーの一団としてはかえって調和を感じるくらいだ。ヒーローの敵というのは雑な後付けに過ぎず、もともと子どもと一緒に学習をする趣旨なので、別に恐ろしげでもない。


 しかし、対するコマンドー・エリートの面々は違う。最初にデザインされたであろうチップ・ハザードだけは角ばった顔に真剣な眼差しで、わかりやすくヒーロー然とした硬派な兵士という感じだが(トミー・リー・ジョーンズの声がよく合っている)、他の隊員の造形はゴーゴナイトよりよっぽど怪物的な印象を受ける。特に劇中で説明はないのでこれは想像に過ぎないが、急遽複数体いるゴーゴナイトとの戦いが設定されたため、コマンドー側のキャラクターを急拵えで増やしたせいと見ることもできそうだ。チップ以外の隊員に同時に作り出されたような統一感があるのもその印象を強くする。


 正義側のキャラクターなのに怪物的な顔、敵側の怪物キャラクターなのに愛嬌がある、というこの視覚的な逆転こそ本作の軸のひとつだろう。それはG.I.ジョー的な軍隊フィギュアのパロディであると同時に、純粋な遊具としての玩具よりも、既存作品のキャラクター商品、あるいは予めキャラクター設定が与えられた玩具が勢いを持っていた時代への、皮肉な視線だったのかもしれない。ちなみにG.I.ジョーはざっくり説明すると男児向けの兵士版バービー人形というようなものだったのが、ベトナム、湾岸、イラク戦争といった現実の動向と呼応するかのように変遷し、架空の悪役と戦う軍隊ヒーローとしてキャラ付けがなされたラインを主軸に現在に至っている。現実の軍隊だけをモチーフにし続けるよりも息が長くなったのはもちろんだが、それもキャラ設定やアニメ作品の力によってだった。『スモール・ソルジャーズ』の頃は湾岸戦争とイラク戦争の間にあたり、リアルミリタリー路線が一時復活していた時期でもあったが、やがてそのシリーズも途絶えることになる。


 コマンドー・エリートと他のおもちゃとの絡みとしては、「グウェンディ人形」とのくだりもおもしろい。これは子どもの頃に観て強烈な印象を残したものだ。グウェンディは劇中でのバービーに相当するファッション・ドールだが、キルステン・ダンスト演じるクリスティの部屋に潜入したコマンドーたちが壁一面のコレクションを発見し、チップが彼女たちを補助部隊としてリクルートすることに決める。グウェンディたちにも凶暴な人工知能がコピーされた上、『フランケンシュタイン』のパロディを経て誕生したのは髪を抜かれて腕などに刃物等がつけられた変わり果てた姿。この映画の敵おもちゃたちの恐ろしいのは、躊躇なく人間を傷つけるため殺傷能力のある道具が平気で装備されるところだ。部屋のコレクションの多さが裏目に出るという、オタクにとっても恐怖のシーンである。





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