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『mentor』吉田恵輔監督 破壊的で新しい描き方、自分が当事者になれる映画を【Director’s Interview Vol.598】
普通のシナリオではない、破壊的で新しい描き方
Q:前回の取材のときに「次はほんとひどい映画ですからね!」みたいに仰っていて、そうじゃないとは言わないですけど(笑)、九割五分まで、すごくちゃんとしたいい映画でした。なので、まず「どういうつもりなんですか?」ってお聞きしたいです。
吉田:でもほら、この映画だと最初の方で埜本(綾野剛)が拓海(末澤誠也)を抱きしめるじゃないですか。「会いたかったよ!」って。本来はこういう物語って、あれがラストシーンなんですよね。普通の映画の作り方、シナリオの書き方でいうと。いろいろ許されないことを反省しながら、お互いの気持ちがわかって、最後に赦しを得るっていうのが大体の「罪と罰にまつわる映画」の作り方なんだろうけど。それを出会った日にいきなりやっちゃったらどうなるんだろうと、要はシナリオの破壊的なことをやろうと思ったんです。「あれ?もうエンディング来ちゃったね」みたいな(笑)。

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Q:一番のクライマックスのはずなのに(笑)。
吉田:そうそう。本来は、罪を背負った主人公の2人が「俺の痛みなんかわかんねえだろ!」って言いながら、でもお互いの気持ちをわかっていって、最後に赦される、ハグされる、みたいなイメージだったんだけど。「まだ10分ぐらいしか経ってないのに、もうそこに来ちゃったんだけど?」みたいなところから始めて、「さあ、ここから物語をどうやって広げていくんだっけ?」っていう、自分自身に無茶ぶりの大喜利みたいなお題を出している感じでした。
だから、もう普通のシナリオの書き方じゃない書き方でいいやと思って、よくわかんないけど「反省の仕方がお前と俺で違う!」みたいな、どうでもいい2人のマウントの取り合いが始まったり(笑)。だから俺からすると、最初にテーマ的な軸があって書き始めたというより、ライブ感覚で作ってくうちにテーマ的なものが見えてきた感じですね。遊びの要素が多いから、作ってはみたものの「これって何だろう?ふざけすぎてないか?みんなに届くんだっけ?」みたいな感覚でした。でも、九割五分はちゃんとしてました?
Q:はい、ちゃんとしてました。もちろんあまりにも過剰な土下座のシーンとかは「ああ、吉田監督、やってんな!」って笑いましたけど。でも基本は直球の人間ドラマだと思いました。
吉田:うん、ちゃんと人間ドラマに見られるといいなと思ってがんばりました。下手すれば「何やってんのコレ?」っていう場面が無限に続いてるように見られる可能性もあったから。
Q:でも、さっき仰った「俺の痛みなんてわかんねえ」っていう怒りや憤りは、例えば『空白』(21)とか他の作品でもやってきたテーマですよね。今回はその先まで描きたいみたいな気持ちがあったんですか。
吉田:そうですね。わりとそこは何度もやっちゃったから。いわゆる大感動ものみたいな感じが『空白』とか『ミッシング』(24)にはあると思うんですね。傷ついた魂が、最後に何か光を見るみたいな。そういうわかりやすい構造を破壊的にやりつつ、新しいものにしたかった。大事な人を失った者の痛みっていうスタートは一緒だけど、これをどういうふうにぶっ壊すかっていうことは、結構挑戦してやりましたね。