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『mentor』吉田恵輔監督 破壊的で新しい描き方、自分が当事者になれる映画を【Director’s Interview Vol.598】
独特なユーモアと辛辣さと優しさでもって、唯一無二の作品を安定供給してくれている異才、吉田恵輔監督の今年2本目となる最新作『mentor』が10月16日より公開となった。幼い頃に取り返しのつかない過ちを犯したかつての親友同士と、2人によって大切な家族を奪われた中年男。彼らが再会したことで、凄惨な復讐劇になるかと思いきや、奇妙な交流が始まって、一風変わった師弟関係、メンターとメンティーの関係が生まれてしまう……。喜劇や悲劇では語りきれないグレーゾーンに果敢に踏み込む吉田監督の現在地について話を聞いた。
※吉田監督の『よし』は土に口です。
『mentor』あらすじ
それは運命の再会だった。15年前に花火遊びでアパートの火事を起こした拓海(末澤誠也)の前に現れたのは、その火事で大火傷を負い、妻子を失った埜本(綾野剛)。恨んで当然の相手なのに、詫びる拓海を優しく包み込む埜本。その不思議な優しさに惹かれ、埜本を"メンター"として慕い急速に距離を縮めていく拓海。一方、拓海とともに火事を起こした龍之介(磯村勇斗)は、アーチェリー競技と出会い、オリンピック日本代表になるという夢を追いかけていた。今の龍之介にとって拓海や埜本との再会は、平穏を揺るがしかねない。埜本に触発されて被害者への謝罪にのめり込む拓海にも、不気味なほどに優しすぎる埜本の態度にも違和感を拭えない龍之介。やがて事態はまさかの方面に転がり、歪な三角関係は狂っていく。そして物語は、誰も想像しなかった結末へ。
Index
- 『四月の余白』と合わせての「メンター二部作」
- 普通のシナリオではない、破壊的で新しい描き方
- 自分が当事者になれる映画を作る
- 「恥ずかしさ」を詰め込んだ主人公たち
- 綾野剛と作り上げた、近所にいそうな「メンター」
- 次世代に受け継がれる「吉田映画」
- 映画作りのメンター・塚本晋也の影響
『四月の余白』と合わせての「メンター二部作」
Q:今年は『四月の余白』と『mentor』と新作が2本も公開され、SMをモチーフにした次回作『SPUNK -スパンク!-』の制作も発表されました。さすがに忙しすぎませんか。
吉田:身体は元気なんだけど、『SPUNK -スパンク!-』のクランクインが近くて、今、女王様と毎日のようにやりとりしてるんです。もともとは(漫画家の)新井英樹さんと俺が一緒にSMクラブに通っていて、新井さんが「面白いから漫画を描くよ」って全4巻まで描いて、連載中にも「これ映画化するのは俺だな」なんて言ってたんです。そこから二年ぐらい過ぎてやっと成立した。それが11月1日にクランクインするんですよ。
Q:『愛しのアイリーン』(18)に続いての新井英樹作品の映画化ですね。
吉田:最初は新井さんの原作をそのまま映画化するつもりが、漫画の連載が終わって、モデルになった店が閉まっちゃったんです。だから映画オリジナルの、漫画の終わりからの続きを書きました。

『mentor』©2026「mentor」製作委員会
Q:今日は『mentor』の話を中心に伺いたいんですが、『四月の余白』でインタビューした時に「メンター二部作になる!」と仰っていました。時系列としては『四月の余白』を作っている途中に『mentor』のアイデアを思いついたんでしょうか。
吉田:いや、『四月の余白』は5年前ぐらいに書いた本なんです。だけどぜんぜん成立させられなくて、たまたま『mentor』と同じ年になっちゃったんです。まず『四月の余白』でメンターものを書いたけど、それがなかなか実現しなかった。そうすると俺の中でメンターというテーマに対する興味がまだ終わってないから、またメンターものを書きたくなっちゃった。「『四月の余白』のメンターみたいな存在って胡散臭くね?」みたいに、自分でツッコミたくなったんですよね。
Q:一ノ瀬ワタルさんが演じた、更生施設を運営している主人公のことですね。
吉田:そうです。一ノ瀬さんが演じた人物に対して「人の上に立って何かを指導する器ってありましたっけ?」みたいな気持ちが生まれて、『四月の余白』のシナリオから2年後ぐらいに『mentor』を書き始めました。