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『mentor』吉田恵輔監督 破壊的で新しい描き方、自分が当事者になれる映画を【Director’s Interview Vol.598】
自分が当事者になれる映画を作る
Q:今の話とも関連するんですが、『四月の余白』では、一ノ瀬さんが演じた主人公の一番劇的な瞬間が、映画が始まる前にすでに終わっています。『ミッシング』もある意味そうで、事件そのものは解決しないし、決して物語の中心じゃない。今回も、最初に火事のシーンはありますけど、むしろその後の長い人生の方が中心になっていますよね。
吉田:はい。例えば『ミッシング』みたいな行方不明ものって、本来は子どもがいなくなった事件の日に一番スリリングなものがあるじゃないですか。だけどあの映画は、その三ヶ月後の時点から始めたんですよね。
Q:それは長年映画を作ってきて、新しい方向性や可能性を求めているからなんでしょうか。
吉田:純粋に、自分が“その後”の方が見たいんですよ。行方不明ものの映画だったら、普通は子どもがいなくなった時の夫婦のワタワタであるとか、警察の動きの悪さとかが描かれるんでしょうけど、それって誰が作ってもわりと同じパッケージになりそうだと思うんです。だったら俺がいちいち描かなくてもいいかなと思ってしまって。それよりも、事件自体が忘れられて、ニュースにもならなくなってから後の時間の方が、俺は興味があるんです。『mentor』の火事のシーンも、物語のスタートだから作りましたけど、どちらかと言えばそこから十年間の苦しんだ日々より、それを経て彼らがどう成長してしまったのかっていうことに興味が向いてる。それももしかしたら自分の年齢のせいかもしれないですね。

『mentor』©2026「mentor」製作委員会
Q:吉田監督も50代になったんですよね。
吉田:51になっちゃった。自分が30歳ぐらいでまだ何かに向かって走ってる最中だと、事件の当事者というか、渦の中心にいる感じがするんだけど。もうちょっと俯瞰して見る年齢になってくると、物の見方も「あの事件って一体何だったんだろう?」みたいになってくる。彼らがワタワタする姿よりも、どういう想いで過ごして、どういう結果になっていくのかの方に興味が移ってるのかもしれないですね。あと、結局事件ものを描こうとすると、警察が出てきたりとかいろいろあるじゃないですか。でもそれって俺らとあんま関係ない気がしませんか?
Q:確かに、普段あまり接することのない人たちのお話になりますよね。
吉田:だからどうしても、外野として見るしかない気分になっちゃうんですよ。一方で、自分がやったことをどう反省し、折り合いをつけていくかっていう話なら、当事者になれる。俺らだって誰かを傷つけちゃったりとか、なんであんなこと言ったんだろうってモヤモヤしたり、みんな同じ感覚を持ってるはずで。でも警察が出てくると「現場を保存してください!」みたいな話をしないといけなくなる。でも「保存してください」系って自分とはあんまり関係ねえんだよなみたいに思っちゃう。だからどうしても、事件を中心にするんじゃなくて、毎回、人間の想いみたいな方がテーマになっちゃいますね。一回くらいは警察が活躍するようなものもやりたいですけどね。