©2026「mentor」製作委員会
『mentor』吉田恵輔監督 破壊的で新しい描き方、自分が当事者になれる映画を【Director’s Interview Vol.598】
「恥ずかしさ」を詰め込んだ主人公たち
Q:『mentor』の主人公たちは三者三様ですけど、自分の印象として、3人ともに吉田監督っぽさを感じました。
吉田:それはやっぱりそうだと思います。本来なら、今ここで喋ってる俺の監督としての目線は、やっぱり磯村勇斗君が演じた龍之介に近い。世の中を小馬鹿にしてるわけじゃないですけど、ちょっと冷めているというか、ものごとを上からや斜めから見ている感じなんです。
末澤君(が演じた拓海)のつい没頭しちゃう感覚は、俺にはあんまりない。いや、あるっちゃあるのかな。でも例えばホストに狂うとか、宗教に傾倒するとか、この映画みたいにメンターに執着したりとかは、普段の俺にはないんですよ。もっとロジカルに考えちゃう人だから。ただ映画監督を目指すっていう点においては、結構拓海みたいな時代はあった。こういう風で(視野が狭くなるジェスチャー)、恋愛とかもどうでもいいって感覚で自主映画を作ってたし。そこら辺の感覚は「昔はあったな」とは思いますね。
Q:引きこもって壁に「壁」って書いてたという、暗黒時代ですね。
吉田:うん。壁に「壁」って書いてた頃の自分は拓海と近いとは思う。あと最近では埜本みたいなメンター的な感覚もあります。一応、後輩は多いし、俺、めちゃくちゃいいこと言うんですよ(笑)。飲んでいて、いいこと言って、いいこと言ってる自分に酔ったりするんです。で、帰りの電車で恥ずかしい気持ちになる。でも埜本はそれを恥ずかしいと思わない人で、たぶん人のために言ってるつもりなんだけど、実は自分が気持ちよくなってる。「やっぱり相談してよかったです!」って言われる瞬間がたまらないみたいな。
Q:自分の中のそういう部分をイジりたい?
吉田:イジりたい。「この恥ずかしい人間め!」と思いながら(笑)。

『mentor』©2026「mentor」製作委員会
Q:埜本のセリフが「ためになるメンター語録」みたいになっていきますけど、あれはどこから集めたんですか。
吉田:俺、自己啓発本を死ぬほど読むので。いや、読むっていうか、本自体は読まないんだけど、YouTubeとかに本の要約チャンネルみたいのがあるじゃないですか。もう3年くらい、いつもその自己啓発系YouTubeを流しながらパズルゲームなんかをしてたんです。で、それを死ぬほど聴いてると「あ、それ言われなくても俺わりとやってんな」とか「確かに言われてみたらその考え方もあるな」みたいに思うことが結構あったりする。けど、よくよく考えると「こいつらってそんなにできた人間なのかな?」ってなるんですね。ちょっと怪しいじゃないですか。書いてる作者がどんな人なのかはわからないし、さっき言ったみたいに、いいこと言うことに酔ってる奴にも思えてくるというか。そういう本の「胡散臭いなこいつ」って感じさせてくれる言葉を集めてみました。
実際のところ、言ってる内容自体はいいんですよ。間違ってないですよ。間違ってないけど、書いてる人間、それを喋る人間が「ちゃんと体現できてますか?」って思っちゃう。たぶん自己啓発本を書いてる人ばっか集めて飲み会したら、「あ、こいつすげえ嫌いかも」って思う奴がいっぱい出てきそうな気がするんです。
Q:でも、吉田監督自身も仰ってましたけど、業界の端っこにいると思っていたはずが、今ではいろんな後輩から助言を求められる立場ですよね。
吉田:そうですね。一応自分では、いつもちゃんと向き合ってるつもりで喋るんですけど、途中から自分語りになっちゃう。最初は相手のためを思って「こうした方がいいんじゃない?」とかアドバイスしてるんだけど、酒3杯目くらいからは言ってる自分が気持ちよくなってるだけのパターンに陥ります。
Q:剥き出しの自分と、それを見つめる他者的な視点の両方が吉田監督にはあると思うんですが、酒が3杯入ってくるとダメですか。
吉田:ダメ。見失う。
Q:見失うんですね(笑)。
吉田:調子に乗って感動的なこと言って、自分で感動して泣きそうになるぐらい饒舌になるんですけど、帰りの電車では酔いが覚めてつり革を壊しそうになります。