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魂を動かしてくれたのは『ロボコップ』!『ロボコップ・コンベンション東京2019』を執念で実現させた、ジャンクハンター吉田氏インタビュー

魂を動かしてくれたのは『ロボコップ』!『ロボコップ・コンベンション東京2019』を執念で実現させた、ジャンクハンター吉田氏インタビュー

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製作から30年経っても色あせない『ロボコップ』の魅力



Q:吉田さんが『ロボコップ』にそこまで心酔したのは何故なんですか?


吉田:これはポール・ヴァーホーヴェンも言ってることなんですが、「肉体は死んでも、魂は生きてた」ってのに感動したんですよ。特にロボコップになったマーフィが、奥さんと息子と3人で住んでた家に行ったときに、記憶がフラッシュバックするシーン。あのシーンを見て、僕は一般試写会でぼろ泣きしたんですよ。そしたら泣いてんの、自分しかいなくて。ここにいる人たちとは、自分は感性が違うんだなと思って、そっから、この作品と、ポール・ヴァーホーヴェンって監督は一生追いかけようと思ったんです。それで、まず試写で見るだけじゃ申し訳ないからってことで、銀座プランタンに行って、プレイガイドがあったんで、「『ロボコップ』のチケット、全部ください」って。「全部で、50枚ありますね」って返されて、でも「50枚全部ください」って。その時、まだ高校生だったんで、店員の人もみんな目丸くしちゃって、何だ、この高校生はみたいな。


Q:なかなか、その買い方、人生でしないですよね。それで50回劇場に行かれたんですか?


吉田:行ったんですよ。全部の劇場回りましたよ、都内近郊の。まずは有楽町マリオンの日劇から回って、公開している全部の劇場回ってみようっていう気持ちがあったんです。


Q:よく行けましたね、上映期間中に!


吉田:行けましたね。日劇では結局7~8回見たんですけど、埼玉、千葉、神奈川までは制覇しましたね。そのおかげでいろんな劇場見れたんで楽しかったですよ。

 



Q:「ロボコップ」は当初、ポール・ヴァーホーヴェンは監督する気がなかったけど、奥さんのすすめで参加を決めたといわれています。本当なんですか?


吉田:本当らしいです。ヴァーホーヴェンは脚本の冒頭だけ読んで、ポイって捨てて。でも奥さんが読んで、「ここ読んだら、あなたも考え方が変わるよ」って、見せたページがまたすごいんです。それは、マーフィが魂を取り戻すシーンですよ。自分がさっき言った、家族を思い出すシーン。


Q:吉田さんの思いとシンクロしてるじゃないですか!


吉田:そうなんです。あのシーン読んだ時に、ヴァーホーヴェンが、「これは俺が映画化するしかない」と思ったそうです。これはすごいヒューマンドラマなんだって分かって、最後まで脚本読んでなかったのは申し訳ないってヴァーホーヴェンが謝って、これは俺がやるみたいな感じで。だからロボコップが自分が住んでいた家を訪ねて記憶を取り戻すシーンは、ヴァーホーヴェンが一番演出に力を入れたシーンらしいです。


Q:ヴァーホーヴェンってその後のフィルモグラフィーを見ても、主人公の自我が揺らぐ話が多いじゃないですか。『トータル・リコール』(90)もそうだし。『ロボコップ』は、主人公が自分を探していくというテーマの原点のような感じがしますね。


吉田:そうですね。全てが詰まっているとヴァーホーヴェン本人も言っていました。『ロボコップ』がなかったら、今の自分はない、自分の全てだって。もう恥ずかしげもなく言ってるところが嬉しいです。


Q:その言葉で世界中の映画ファンはヴァーホーヴェンに惚れ直しますよ。


吉田:そうなんです。この1本で全てが掌握できちゃったんです。ヴァーホーヴェンは、バイオレンスが大好きな人で、グロいシーンも平気で撮れるし、しかもヒューマンドラマもちゃんとできてて、社会風刺も入れて。こんな作品『ロボコップ』以外、他にないんです。

 

吉田さん秘蔵!ポール・ヴァーホーヴェン監督サイン入りロボコップ・ファミコンソフト


Q:今度、4K版を大画面で見られるということで、吉田さん一押しの見どころを教えていただけますか。


吉田:当然一番見てほしいところは、やっぱりヴァーホーヴェンも一番力を入れた、家族と住んでいた空き家を訪ねるシーン。それと最初の銃撃戦、クラレンスの一味とカーチェイスするシーンです。あとは、クライマックスの製鉄所のシーンです。あのシーンを4Kで見られるってのはすごいと思います。あそこはヨスト・ヴァカーノって、ドイツ人の撮影監督が撮ってるんですが、マーフィが現れるシーンは、キリストの復活を描いてるから、きれいに撮ってくれってヴァーホーヴェンがものすごいリクエストして、相当きれいに撮ったらしいです。


Q:キリスト復活の聖画のようなイメージがあったのかもしれないですね。


吉田:そうなんです。ヴァーホーヴェンも脚本のエド・ニューマイヤーも、『ロボコップ』をキリストの復活劇としてはっきり意識して作っています。いろいろスタッフに聞いたら、マーフィの腕を吹き飛ばすシーンも、キリストが十字架に磔にされるイメージらしいです。


Q:お話を聞いてきて腑に落ちてきたんですが、吉田さんにとって『ロボコップ』は、憑代(よりしろ)みたいな、エネルギーが集まる器みたいな存在なのではないでしょうか。


吉田:何だろう。高校生の時に銀座プランタンで『ロボコップ』のチケット50枚買った瞬間に何かが変わったんですよ。こうやって一枚一枚、50枚、自分で数えたんです。1、2、3、4、、5・・・って。数えていくうちに、ほんとに50枚あるなって。その時に、「あれ、この俺は一体何者なんだろう?」って。これは、何かを『ロボコップ』に費やさなきゃいけないんだと思っちゃって、それで映画業界に入ろうと思ったんです。



 

Q:「ロボコップ」のテーマも宗教的だし、その吉田さんの行為も、ある種宗教的というか。チケット50枚買って映画館を回るって、ある意味「巡礼」じゃないですか。


吉田:巡礼です。そうなんです。


Q:四国の四十八カ所巡りみたいな。お百度を踏むというか、まさに巡礼。そんな吉田さんが言う、「ロボコップだから、大丈夫。なぜならロボコップだから」って言う理屈も、よく分かる気がします。『ロボコップ』という作品はエネルギーが集まるある種の器なんだってことですよね。そのパワーがちゃんと全国から集まって、今回遂にお台場で上映が実現します。


吉田:自分の長かった30年の旅路が終わるんです、ここで。


Q:今回の上映会に向けて全国の『ロボコップ』ファンにメッセージをお願いします!


吉田:俺ももう49になっちゃうから、自分がいつまでも出てたら、若い人たちが育たなくなっちゃうんで、もっと若いロボコップ好き、20代とか30代の、「俺、この作品見て感動した。ロボコップ全部のDVD集める」みたいな、ほんとロボコップ好きになってやるみたいな、吉田みたいなバカになってやる、そういう人が現れてほしいんです。それが現れないと、自分の旅が終わんなくなっちゃう気がするんです。


Q:継承者が必要なんですね。


吉田:そうなんです。そんな人が今回のロボコップ・コンベンションで現れるんだったら、自分としては本望かなと思ってて。


Q:なかなかハードル高そうですね。


吉田:ハードル高いんですけどね。「吉田さん、頑張りましたね」って言われて、いや、全然頑張ってないって。『ロボコップ』が頑張ってんです。『ロボコップ』が動かしてるだけなんだって。魂を動かしてくれたのは『ロボコップ』だって。


Q:なるほど。では、新たに魂を動かされる人が上映会で現れるんじゃないかと。


吉田:そうなんですよね。自分の継承者が現れればいいんですけど。


Q:是非、その継承者を探しましょう!




取材・文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。

 



ジャンクハンター吉田:ライター

「ロボコップ」との出会いは高校二年生。一般試写会で泣いて感動し、劇場鑑賞券を50枚購入。ロードショー中に50回鑑賞のミッションコンプリートを果たしたのち、ビデオリリースを待てず、当時マニア向けだった輸入盤VHSレンタル店まで足を運ぶ。 

「ロボコップ2」は初渡米時にLAで鑑賞。その後、映画職に就き、「ロボコップ3」ではプロモーションワークを担当。 

「ロボコップ」プロデューサーのジョン・デイビソンにはオフィスに招かれ、脚本のエド・ニューマイヤーにはインタビューを敢行。映画「ブラックブック」日本公開時にはポール・ヴァーホーヴェン監督にファミコン版「ロボコップ」カセットにサインを頂戴するミッションを遂行し、業界では「ロボコップバカ」と知られるようになる。 

2014年のリメイク版「ロボコップ(通算4作目)」公開時にはプロモーションを担当。「誰が読んでも全員がビックリさせられる濃厚なロボコップヒストリーを書いて後世へ伝えたい」との思いで、20世紀FOX発売のBlu-ray版特典ブックレット「ヒストリー・オブ・ロボコップ」の執筆も担当。20世紀FOX社内では「一冊の本にできるほどの情報量だった」と未だに語られ(最初の原稿はページ数の都合上、泣く泣く削ることに)、映画業界では「ロボコップ博士」と呼ばれる。



『ロボコップ・コンベンション東京 2019』

◆日時:2019 年 1 月 14 日(月・祝日)12:30~16:30(予定) 

◆会場:ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/スクリーン No.1 

(東京都港区台場 1 丁目 7-1 アクアシティお台場 1F) 

◆当日券:5,000 円(後方座席のみ) 

CAMPFIRE【ロボコップ・コンベンション東京 2019】プロジェクトページ: https://camp-fire.jp/projects/view/100535

最新情報は【ロボコップ・コンベンション東京 2019】Twitter 公式アカウントにて: https://twitter.com/robocopcon2019 

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