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強烈な個性の主演二人を導いた、枝優花監督のアプローチとは『少女邂逅』【Director’s Interview Vol.15】

強烈な個性の主演二人を導いた、枝優花監督のアプローチとは『少女邂逅』【Director’s Interview Vol.15】

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「入ってきた時点で違った」オーディション



Q:主演に決まった二人はすでに結構有名で、事務所にも所属していると思いますが、自主制作映画のオーディションを普通に受けに来たのですか?


枝:そうですね。二人とも普通に受けに来ました。そのときにすでに、MOOSIC LABの認知度が高くなっていたというのもあったと思います。これがもし3~4年前だったら来なかったかもしれません。ちょうどその時は、自主制作映画でも企画や作品が良ければ事務所所属の役者さんたちも出演するスタンスの方々が増えている時期でした。なので想像より多くの役者さんたちが来てくれました。200人近い女優さんに集まっていただきました。

 

Q:その中で、保紫さんモトーラさんと巡り合うわけですが、二人を主演に選んだ決め手は何だったのでしょう。


枝:よく言う「入ってきた時点でもう違う」という感じはしましたね。




Q:それは二人とも?


枝:はい。二人ともです。オーディンションは5,6人ずつ順番にやったのですが、保紫さんの場合は、死ぬ気で役を取りにきてる感じが部屋に入ってきた時点で伝わってきました。しかも、自分で(脚本で必要な小道具の)カッターを用意していました。


Q:それは脚本を読んで役に合わせているのですか。


枝:そうですね。脚本に書いてある、カッターを取り合うシーンをオーディションでやりました。こちらはボールペンや割り箸などをカッターの代わりに用意していましたが、保紫さんだけ持参してきていました。ずっと目も合わせないで、もう完全に役を背負っている様子で。部屋に入ってきた時点で1人だけ気合が違って、しかもその気合が空回りすることもなく、見事に芝居をしました。


 保紫さんの役は、脚本だけを読むとかわいそうな子なんですけど、保紫さんはその役をかわいそうと思ってなくて、何かこう世の中に対して殺意を持ってるような感じで演じていました。他の女優たちと役の解釈も違うせいもあったのか、保紫さんは脇に置いても目立ってしまう印象がありました。オーディションで自分の芝居をやった後、他の方が芝居しているときに後ろでずーっと泣いてて、もちろん静かに泣いてるんですけど、スタッフ全員、今芝居している方よりもそっちが気になってしまうっていう。保紫さんは圧倒的に面白くて、何故か見てしまうんですよね。


 一方でモトーラさんの場合は、笑顔も愛想もなく、目も合わせてくれず、やる気あります!みたいな感じが全くゼロで、もうずっと眠そうで。スタッフが心配して冗談ぽく「眠い?」「大丈夫?」って言ったら、2秒ぐらい黙って、、「眠くないです」って。後で聞いたら、その時は緊張してたらしいんですけど。


 でも、いざ芝居となると、「ちょっといいですか」って言って、読み込んでボロボロに破れそうになった台本をカバンから取り出したんです。足もガクガク震えだして、台本を持ってる手もすごく震えてました。その時、あれっ、この子って人に見せてる部分は勘違いされやすいけど、内に持ってる部分が全然違うぞって思ったんです。見た目はひょうひょうとしていたり、みんなが羨む魅力を持っていたりするけれど、内面的にはものすごく弱かったりとか、繊細だったりとかするんじゃないのかなと思って、それはまさに役として求めていたことでした。



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