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デヴィッド・シューリスの魅力的な影【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.17】

デヴィッド・シューリスの魅力的な影【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.17】

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影のある役どころ、たまにミミズ





 ぼくなどが言うまでもなく、シューリスは本当にいろいろな作品に出ているが、まだまだ顔と名前を意識し始めたばかりなので観たことある作品は少ない。『ハリー・ポッター』以外で最初に目にしたのは『縞模様のパジャマの少年』でのことだった。


 第二次大戦中、父の仕事の都合で引っ越してきた田舎で、主人公ブルーノは退屈な日々を送っていたが、家の周りで働いている「パジャマ」姿の人々に興味が沸き、近所に彼らが暮らす「キャンプのような施設」を見つける。そこでブルーノは、パジャマを着た同い年の少年に出会い、鉄条網越しに友情を育むが……。シューリスはこのブルーノの父親役で、ナチス・ドイツ将校にして強制収容所の所長だった。歴史を知っている観客は、パジャマやキャンプ、軍服を着た父親から状況を理解できるが、物語はあくまでなにも知らない少年の視線で進む。だから父親も彼にとっては仕事をしているお父さんに過ぎない。この表裏のイメージも、秘密を抱えたルーピンに通じるんじゃないかなあ。


 『ワンダーウーマン』での役柄も記憶に新しい。第一次大戦下、帝政ドイツと戦うイギリスの政治家モーガン卿として、ワンダーウーマンことダイアナらのチームを支援するが……。近作なので詳細は伏せるけれど、このキャラクターもまた物腰の柔らかそうな紳士でありながら影を抱えた人物だった。


 最新作は、ヨットによる単独無寄港世界一周レースに出場したドナルド・クロウハーストの伝記映画『喜望峰の風に乗せて』。シューリスはコリン・ファース扮するクロウハーストの広報を引き受けた実在のジャーナリスト、ロドニー・ホールワースを演じている。黒縁の大きな眼鏡が似合う。クロウハーストから無線で現在地や状況の報告を受けては、メディアにそれを発表するが、ちょいちょい言葉を盛るのでそれがクロウハーストには負担になったりする。


 ちょっと変わったところでは、ヘンリー・セリックとティム・バートンによるストップモーション・アニメ『ジャイアント・ピーチ』のミミズ役がある。原作はロアルド・ダールの児童文学で、巨大な桃に乗って少年と虫たちがニューヨークを目指すお話。子どもの頃からよく観ていたけれど、まさかミミズ役がシューリスだとは知らなかった。臆病者のミミズは、サングラスの表情が楽しい。


 そして、いまのところ一番強烈だったのは、ドラマ版『ファーゴ』シーズン3で演じた悪役V・M・ヴァーガだ。



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