福島在住の方々の出演意図
Q:映画の途中では、実際の地元の方々も出て来て、その声も撮影されています。あのシーンを入れた意図について教えてください。
渡邉:主人公が福島で成長することにおいて、リアルにそこに住んでる人の声を聞いて、その上で成長していく姿を撮りたかったんです。映画の流れでいうと、役者じゃない素人の人たちが出て話すシーンになってはいるのですが、そこまでの導入がしっかりしていれば、映画としてもちゃんと成立すると思っていました。
自分自身もたまに実家帰って、農家をやっている親戚の話を聞いたりするのですが、その際に心に感じる部分がたくさんあるんです。福島で生活していないからこそ、考えさせられることってすごくあると思います。
Q:福島の方々が、外部から来た若者をそのまま受け入れ、厳しくも優しく見つめているところが印象に残りました、あの辺は、実際の県民性や温かみが反映されているのでしょうか。
渡邉:そうですね。その辺は反映しているつもりです。今回の映画を作る際に、多くの農家の方々とお話しさせていただいたのですが、皆さん、人に対してきちんと接する姿勢をしっかり持ってらっしゃるし、温かみもすごく強く感じました。そういう福島の人たちから感じたものから、萩原さんが演じた正雄という人物を映画で提示したつもりです。
Q:そうですよね。真也と正雄の対峙の仕方は、人と人との関係としてとても興味深かったです。
渡邉:正雄は、基本的に受け身であり続けてほしいなと思ったんです。自分自身、祖父から何かを言われたことはなく、彼の姿勢・生き方を感じて、尊敬するようになったんです。だから正雄もそういう存在であり続けたほうが、真也は彼を尊敬しやすくなるのかなと。
一度だけ、真也が正雄に胸ぐらを掴まれるシーンがあるのですが、そこまで正雄が受け身であったからこそ、彼は本気でこれを言ってるんだ。というのが伝わると考えていました。
Q:なるほど、それはまさに演出ですよね。
渡邉:実は、萩原さんから最初に提案があったんです。セリフは必要最低限にして自分からは何もアクションはしない方がいいと。もし何か物語で進めたかったりする部分があるのなら、真也の方にセリフを言わせて展開させた方がいい。って言ってくれたんです。また、自分の祖父のことを萩原さんに話したら、そういう存在として描きたいのであれば、絶対に男の後ろ姿を撮るべきだ。と助言してくれたんです。とてもありがたいですよね。