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英国スパイと魔法使い【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.22】

英国スパイと魔法使い【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.22】

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スパイ映画を結ぶブルドッグ





 『裏切りのサーカス』と『007 スカイフォール』。趣の全然違うこのふたつの作品を、ぼくは以前早稲田松竹の2本立てで観た。続けて観たからこそ、違いやコントラストが際立ってとてもおもしろかった。見比べることもできたし、ここまで書いてきたように、そういえばあちこちにハリポタキャストがいるなあなんてことも思った。並べることで両方の良さが引き立つとも思う。全然違う2本だが、同じスパイというテーマであり、また魔法の世界に繋がる素敵なキャストたちによっても結び付けられるようだ。殺伐としたスパイの世界と、不思議な魔法の世界(こちらもたまに殺伐とするが)を一緒に包括しているイギリスのカルチャーがやっぱり好きだ。


 『スカイフォール』のラストでは、ボンドにMの遺品が贈られる。ロイヤル・ドルトン社製の陶器で出来たブルドッグである。ユニオン・ジャックをまとったその名もジャックと呼ばれるブルドッグは、Mのデスクにも、そして『裏切りのサーカス』でコントロールのデスク周りにも置かれていた。公職に就く人間に欠かせないアイテムとでも言おうか。異なる作品だが、同じ英国スパイの世界を別々の方向から描いている2本。たったひとつ置かれた国犬の置物が、そのリンク点になっているようにも感じられる。




イラスト・文:川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。 

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