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  3. 人と人との結びつきよりも、ディスコミュニケーション、つまり「溝」の方への関心が強いんです。『よこがお』深田晃司監督【Director’s Interview Vol.35】
人と人との結びつきよりも、ディスコミュニケーション、つまり「溝」の方への関心が強いんです。『よこがお』深田晃司監督【Director’s Interview Vol.35】

人と人との結びつきよりも、ディスコミュニケーション、つまり「溝」の方への関心が強いんです。『よこがお』深田晃司監督【Director’s Interview Vol.35】

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「孤独が当たり前である」いう視点に共感してくれる人もいるはず



Q:「人間が孤独である」というのは、もはや深田監督のひとつの信念だと思うんですが、もはや孤独であることの方が安心感があったりするんでしょうか?


深田:安心感かどうかはわからないんですけど、自分にとって「これだけは揺るぎない普遍的なこと」という意味で、やっぱり信じられるものは「孤独」なんですね。人と人の絆は壊れることはあっても、孤独は壊れることはない、なくなることはない。モチーフとしてもより普遍的なので結局映画として描くことになるんです。バルザックは上手いこと言ってますよね。「私たちは孤独である。ただ、私たちは孤独である。と語り合える友人がいることはいいことだ」と。バルザックいいこと言うなって思いましたけど(笑)。


Q:「絆の大切さ」を謳うハッピーエンドみたいなものは居心地が悪いですか?


深田:いやあ、どうだろ。でもまあ、映画で観ると、そんなにテンションは上がらないです(笑)。そういうものを観ても説教された気分にはなりますよね。最近のハリウッド映画もすぐ「家族の絆」の話になる。アメリカ人が「家族の絆」が大好きなのは昔からですかね? マーベルものとかも好きだから観てはいるんだけど、全部それですよね。


Q:深田監督の作品が面白いと思うのは、『よこがお』でも相当キャラクターを過酷な状況に追い込みますけど、嗜虐的であってもシニカルな感じはしないんです。ただ今伺ったようなお話を文字にした際に、世の中を皮肉な視点で見ている作家だと勘違いされる可能性ってあると思うんですよ。


深田:どうなんですかね。自分では「シニカルにしよう!」と意識してやってはいないですけど。「世界は自分にはこう見えている」というものを具体化したら、結果ああなっちゃったんで、すみません。という感じです(笑)。でも、確かに「悲劇」として描いているつもりはないんです。結局「悲劇」ではあるのかも知れないけど、「生きていたらこういうこともあるよね」っていうくらいの気持ちではあるんです。




Q:なるほど。深田監督には「孤独」を可哀想だと捉える視点もあまりないように思います。


深田:それはそうだと思います。それでも生きていかなくちゃいけないですし、さっきのバルザックの言葉にも近いかも知れないんですけど、孤独をごく当たり前のこととして表現すると、そこに共感してくれる人も中にはいてくれると思うんですね。「なんだこれは、全然わからないよ」と思いながらも、心の中のどこかに残っていて、10年後にふと孤独を感じた時に「あの映画ってそういうことだったんだ!」って思ってくれるかも知れない。映画って人生の予行演習みたいな役割を果たしてくれるもので、その意味ではポジティブな気持ちで作ってると思うんですけどね(笑)。こういう視点の映画があることは決して無意味ではない。



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